お題：秋桜 03.負けず嫌い

なんてほのぼの。

ところであの、オセロ＝リバーシ、で良いんでしたっけ？
…何だか偶にこういうのって不安になります。何でか。

---

03．負けず嫌い



「うぅぅ……悔しいですぅ……どうして勝てないですか……」
「経験の差だと思うが」
「うぅぅぅぅ……」
「楽しそうだね」
　寒いから、と食堂までココアを調達に来たアレルヤは、そこで繰り広げられている光景に微笑みを浮かべた。本当に微笑ましい。ティエリアとミレイナがリバーシで対戦しているなんて。こうした光景を見る度に、四年というのは長い期間なのだと知る。だって『あの』ティエリアがこういう事に付き合っているなんて。しかも策略に嵌められたわけでもなく、どうやら自主的に。絶対にあの頃では有り得ない。
　そういえば、ハレルヤとも何回も対戦したっけと昔を思い出し、懐かしく思いながら哀しく想う。彼とはもう二度とこうしたゲームで遊ぶことも、会話をすることすら出来ないのだから。さらにその上、存在すら感じることが出来ないなんて。いつも一緒にいた片割れがいなくなった辛さは、今こうやってCBに助けられてから後によく感じる。あるいは拘束されていた生活の中以上に。
　きっと、それは余裕を持ったが故の強い欠落の自覚。
「君もやっていくか？」
　ちらり、と向けられた視線に首を振って、黙ってミレイナの隣に座る。
　一瞬送られた不満げな視線に苦笑しながらココアを飲んで、再び始まった対戦を眺めることにする。序盤だから先はどうなるとも分からないが、見たところではミレイナの方がやっぱり不利なようだった。ティエリアは頭が良いから、彼を倒すのは一苦労だろう。
「ミレイナ、イアンさんやスメラギさんとは対戦した？」
「パパは弱いからつまらないですぅ…ノリエガさんは何とか勝てたです！」
「フェルトとは？」
「それが、時間があまり合わなくて……」
「あぁ……そういえば最近、アニューにトレミーのことを教えてるんだっけ」
　いくら知識を持っていようと、それを使う場所によって知識は使い方を変化させる。ある程度はその場所のことを知らなければやっていけないだろう。技術面でもそうだし、こちらで暮らすのなら多分生活面でも。
　成る程、と納得しながら他のメンバーのことを思う。
　刹那はダブルオーに付きっきりだろう、絶対。彼のガンダム好きは今に始まったことではないから、とっても良く分かった。沙慈はもしかしたらそれに付き合ってくれているかもしれない。なんだかんだと言って結局付き合ってくれる彼には、ちょっとだけ申し訳なく思っている。ライルは何をしているだろう。見当が付かない。ラッセは部屋で休憩しているはずだ。スメラギも部屋にいるだろうが、こちらは次の敵の動きを予測している。マリーはどうしているのだったか……今朝から動向が掴めない。
　となると、対戦相手はやっぱりティエリアくらいしかいないのだ。
　成る程、と納得している内にティエリアが黒い面を表にして微かに厚みのある円を盤の上に置く。するとたちまち増える黒の領土にミレイナが絶叫した。
「アーデさん鬼です！鬼畜ですぅ！手加減が欲しいですーッ！」
「それを最初にやって怒ったのは君だろうが」
「うっ……いやまぁ、そうですけど……ここは女性サービスでどーにかするものなのです！以前ノリエガさんが言っていたです！」
「あの戦況予報士の言うことは当てにするべきではないと思うが……」
「……確かに」
　ココアを一口飲みながら思う。物にもよるが、スメラギの言うことを全て鵜呑みにしていると恐ろしいことになる。それは彼女に出会ってから今までの経験でよくよく理解している。というか理解しないとやっていけない。
「どのみちミレイナ身の破滅ですーっ！」
「……身の破滅？」
「そんなに大げさな……というか、ミレイナ、まだ勝負は終わってないよ？」
「はっ、そうでしたです！まだ勝負は分からないのです！」
「いや……充分勝負はついているだろう」
　呆れ顔でティエリアが呟き、ミレイナの一手を鮮やかに返り打った。
　あと打つことが出来るのは数手だけ。これで勝つというのは中々難しいのではないだろうか、ミレイナにとっては。……不可能とさえ思っているかも知れない。というか、実際に不可能だ。
　そして結果、やはり勝ったのはティエリアで。
「もう一戦、一戦です！」
「……またか？もう連続で七戦ほどやっているぞ？」
「一回勝てるまで勝負ですぅ！」
　つまり、まだ一回も勝ててないのか。
　それはムキにもなるだろうと再びココアを飲んで思って、後でマリーと一緒にリバーシをやってみるのも良いかもしれないと思った。

---

一体何時の話でしょうか……何か時期が合わない気がする。無理に入れ込むとしたら…どこ？