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肩。最初は『肩車?』って思ってました。
でも……使う場面無いよ本当に。

そゆわけで、肩車ではないです。



02.肩



 地上は嫌いだ。重力も、空気も、地上のものは何もかもが。
 だが……この日だまりだけは、嫌いではないかもしれない。
 暖かくあり、ただそれだけな気もするのだが……思わぬ副産物を産む、そこだけはきちんと評価してやるべきだろう。
 横長の椅子に腰掛け、ティエリアは本のページをパラパラと捲っていた。
 読んでいるわけではない。もう、この本はすでに読み終えてしまった。二度も同じものを同じ日に読むのはバカバカしく思えるし、まったく何もしないのも暇だから、こういうことになっている。他の本がこの近くになく、残りが全て部屋にあるのも原因の一つといえるだろう。
 ここは留美の持つ別荘の一つだ。休養をとれるようにと作られたものらしく、庭には今ティエリアが座っているような椅子の他、小さな池や大きな花壇など、目を楽しめるものがたくさんある。さすがに遊具などは置いていないようだが。
 もちろん、ティエリアは休養を取るためにここにいるわけではない。れっきとした任務でここにいる。近々、ここの近くでテロが起こる確率があり、できればそれを未然に防ぎ、できなければ実行犯を捕まえるのが今回のミッションだ。使わないとは思うが、念のためにガンダムも別荘からそう遠くないところに置いてある。
 それにしても……と思う。
 ここには、本当に音がない。静かすぎる。動物の鳴き声、風の音……そういったものは聞こえてくるのだが、車の音、人の話し声などといったものは無い。自然が生み出す音しかこの空間には存在していない。
 今、そのことは実に好都合だといえる。妙な音がして、隣で眠っている彼が起きるような心配がないからだ。
 隣の彼……アレルヤは、穏やかな寝息を立てて、ティエリアの肩に頭を乗せて眠っていた。膝には、読みかけの開いたままの本がある。
 始めは、一人で本を読んでいたのだ。そうしたら、いつの間にかアレルヤが現れて、隣に座って本を開いていた。
 それに気づいて、しかし何も言うことはなかったので、心地よい沈黙の中で読書を続けていると、突然肩に重みを感じた。
 ちらり、と視線をやると、そこには彼の頭があり……
 そういう経緯で今に至る。
 部屋にある本を取りに行けないのはこういう理由からだ。起こしてしまうのは忍びないし、わざわざこの穏やかな時間を手放すこともなかったから。
 おそらくだが、彼は日だまりが心地よくて、それで眠ってしまったのだろう。というか、それ以外に彼がここで眠る要因が見あたらない。
 今回のミッションが二人でだけのもので良かったとしみじみと思う。ガンダムの性能の関係で刹那とロックオン、ティエリアとアレルヤで組むことが多く、それは結構ありがたいことだと思っていたのだが……最近ではそういう傾向が崩れて来ている。だから、下手をしたら刹那と組んでいたかもしれないのだ。ロックオンは別の任務に当たっているので除外できる。
 あるいは、三人でという話もあったかもしれない。だが、一人はプトレマイオスに残っておいた方がいいこともあり結局、こういうことになったのだと思う。
 人選には、滅多に地上に降りようとしないティエリアを何とかしようというもくろみがあったのかもしれないが、それさえ感謝するべきことだ。それのお陰で今、こうして二人きりの時間を持てるのだから。
 と、肩に乗っていた頭がずり落ちて、とす、という音と共に膝に収まった。
 一瞬だけ、どうしようかとティエリアは悩んだ。
 けれども結局、一番最初に思いついたことをすることにする。
 本を閉じて何もないところに置き、黙ってアレルヤの頭をなでる。
 触れた髪は存外サラサラとしていて、心地がよい。上向きにはねている髪をまっすぐに直そうと引っ張ってみるも、手を離した瞬間にまたもとに戻ってしまう。不思議な髪だ。どうやったらこういうはね方をするのだろうか。
 彼の頭をほんの少しだけ動かして顔が見やすい角度にすると、目に映った顔はさっきよりも穏やかなものだった。笑みも、かすかに浮かんでいるようだ。
 よっぽど、良い夢を見ているのだろう。

 ……果たして、その夢の中に自分の姿はあるのだろうか?

 そんなことを思い、苦笑する。らしくもない考えだ。
 だが、もしもいたら。
 そうだったらきっと………
 ふっと笑みを暖かなものにして、ティエリアは手を彼の肩に移して軽く揺すった。
「アレルヤ・ハプティズム、そろそろミッション開始時刻だ」
 起こしてしまうのは忍びないけれど、早く夢の世界から現実に戻ってきて欲しいのも事実だ。いい加減、一人で起きているのも飽きたことだし。
 もぞ、と彼の体が動いた。


我が家のティエ様は甘いですねぇ……アレルヤ限定で。
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