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早速目当ての対象に出くわすことが出来て、セラヴィーはクスリと笑った。
アリオスがキュリオスを連れて帰ったのは本当。彼が倒れればハロとHAROとやらの捜索は無理だから中止した。……けれど、帰り道にコッソリと脇道に逸れてワザとはぐれ、一人でここまで歩いてきたのは他でもなく自分の意思。
探していたのは、イトが絡み付いていない希有な存在。
何人かいるのは分かっていた。見えていなくても、傍にいなくても、ここまでたくさんのイトが出現している中、そのイトが寄りつかない相手というのは本当に珍しい。真っ暗闇の中でとてつもなく明るい光が煌々とついているかのように、セラヴィーには思えた。
ただし、他のイトを見ることが出来る人ビトにも気付く出来るかは不明。アリオスには少なくとも、気付いたような素振りはなかった。が、まぁ、彼の場合は気付いていても気付かないふりをすることがあるから微妙だ。興味がなければ全くと言って良いほどに注意を払わない、そういう対象なのである。
「あ、僕のことはセラヴィーって呼んでくれるかな。それが僕の名前だから。天使階級から来てるっていう話なんだけどこの名前、でも何か複雑だなぁ……だってそしたら僕って一位だよ?リーダーは僕じゃ無くって別のヒトなのになんか締まらないと思わない?あ、そういえば君の名前って何かな?」
「……刹那」
「あぁ、そう刹那君か」
良い名前だね、と微笑みながらも彼の様子を見る。
警戒が解けていないのは当然だ。むしろ解かれたら解かれたで、そちらの方が不安になってくる。そんなの嫌だ。
とりあえず、彼が人間であろうコトは一目で分かった。
ただ、ちょっと何かが違うような気がした。
それが何なのかは自分には分からない。強いて言うなら心関係の何か、としか言うことは出来ない。こう言うときにアリオスがいてくれればいいのだが、生憎、そちらはセラヴィーの専門外だったので手が出せなかった。残念。
「で、刹那君は何してるの?こんな時間に」
「人探しだ。あと、君付けは止めてくれ」
「なになに?恥ずかしいの?くすぐったい?うんうん、何か分かる。君ってそういう感じのキャラだよねぇ。多分で悪いけどさ、刹那君……じゃなくて刹那って、君付けされて呼ばれた経験少ないでしょ。見た感じ、そういう印象受けるもの」
どう?と問いかければ少々迷った後であろうが、肯定。
素直なのだなと、その反応で新しい発見をする。見た目も好青年という感じがするし、印象としては結構良い感じだ。
「で、改めて。人探しって誰を?」
「親しい知人だ。容姿は……説明が難しいな」
「え?何か説明しづらいとか、そういうヒト?」
「あぁ」
言われて、セラヴィーはちょっとだけ考え込んだ。説明がしづらい、というのはどういうことだろうか。容姿が……とんでもなく酷くて言い出しにくいのか、それとも本当に『説明できない』相手なのか。
「そのヒトって、異端だったりして?」
「……あぁ、そうだな」
「で、変身能力が使えたりするの?」
「……その通りだ」
「でさ、初対面の僕にそこまで普通に答えて良いの?」
ニコリと笑って訊いてみると……彼は意外にも冷静に、コクリと頷いた。
驚いていると、刹那は言った。
「お前、エクシアたちを知っているだろう」
「え?エクシア?って、あのエクシア?」
「あの、がどれかは分からないが……恐らくそのエクシアだ。仲間だろう」
「…うん」
答えながら納得する。彼は、自分がエクシアの仲間であると半ば確信をしていたがために、これらの質問に正直に答えたのか、と。
それでもやっぱり、軽率というか…あまりヒトを疑ってないな、とは思ったが。