[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
コアラといわれてもどうしてもコアラ事態で思いつかなかったんです。
ので、「コアラ」から「コアラのマーチ」へと。
…良いのかソレ。
大御所兄妹ですよ。メイン。最後にちょこっときゃのっ八も出ますが。
25:コアラ
MSが人間になるという異常現象が起こってから三日目の朝。
ちょっとした危機がれんぽーを見舞っていた。
「大変ですお兄さん!」
「んー?アレックスおはよう……で、何が大変なの…?」
「食べ物がコアラのマーチしかないんです!」
「へぇ、コアラのマーチしか……ってえぇぇぇぇ!?アレックス、それは本当!?」
「本当なんですお兄さん!しかも×1なんです!」
「×1!?」
「えぇ、×1です!」
どうしましょう、とアレックスはチラリと他のメンバーがまだ寝ている部屋の方へと視線をやった。
このままでは困る。本当に困る。だってコアラのマーチ(×1)しか食べ物がないということはつまり、コアラのマーチ(×1)しか朝食にすることが出来ない、ということである。朝からたったそれだけしか食べられなければ、きっとれんぽーのメンバーはあっという間にダウンしてしまうだろう。ていうか特に自分が。
コンビニは一昨日から急遽とした無期限休止をしている。これはこの現象が何でどういう物なのかが分かっていないがために起こった、緊急対処方だった。何をどうして良いのかが分からないので、とりあえず様子見がてら休んでみましょうと言うこと。喩えるならば学校の学級閉鎖みたいな。
だから、買いに行くことは出来ないのだった。
「とっ……とりあえずコアラのマーチ(×1)を開けてみて、公平に分けてみようか」
「それが第一ですね。適当に分けて差が出たらケンカになっちゃいます」
というわけで。
アレックスはキッチンの方へととって返し、コアラのマーチ(×1)を取って急いで戻った。事は、出来るならば他のメンバーが起きてくる前に済ませておきたい。
そうしてチマチマと分けていって、結果。
「大変ですお兄さん!」
「今度は何!?」
「一個コアラが余ってしまいました!」
「それは大変だね!」
「どうしましょう!?これお兄さんのところにこっそり紛れ込ませても良いですか!?」
「え、ちょ、ちょっと止めて!それバレたらオレがたんくに殺される!」
「でも……捨てるのは勿体ないです」
シュン、とうなだれると焦ったように兄の言葉。
「あ、アレックスが食べたら?今ならオレ以外見てないし!」
「それもそうですね。お兄さん、内緒ですよ」
確かにと頷いて、アレックスはポイッと口の中にそれを放った。美味しい。
と、コアラのマーチ(×1)の話がどうにか収まったのではあるが。
「ですが……やっぱり少ないですね」
「だよね。そういえば、どうして今回はこんなに少ないの?いつもはちゃんと…」
「その、昨日は調べ物に集中していたから買い物に行っていないんです……」
「…あ」
「ごめんなさい、お兄さん」
気付いたときにはもう、お店はどこも開いていない時間だった。
それでもまぁ、朝ご飯くらいはあるだろうと思っていたのだが……甘かった。まさか食パンも一枚もなく、コアラのマーチ(×1)しかないとは。やはり、ちゃんと確認を前日に取らなかったのが問題だったのだろうか。
台所を預かる身として、これは致命的なミスだった。
「……昨日はオレが元は頼んでたんだし、アレックスだけのミスじゃないよ」
「ですけど……」
「アレックスが悪いって言うなら、その原因を作ったオレも悪いってことだから」
気にないで、と降ってきた声と、ポンと頭に置かれた手。
今は五本の指があるそれは、なんだかいつもよりも暖かく思えた。人肌だからだろうか、それとも単なる感じ方の違いだろうか。
どっちだってかまわないと思う。
とにかく、嬉しい。
「お兄さんは優しいですね」
「そう?普通の兄だよ、オレは」
「いいえ。私はお兄さんの妹でとっても誇らしいです」
「アレックス……」
微笑んで見せると、感極まったかのような顔をする、兄。
そして。
「おー、二人とも早いな。…そのコアラのマーチ何だ?」
きゃのっ八が起きてきて、その言葉に。
「あ」
「あ」
そういえばその問題がまだ残ってたと思い出した。
コアラのマーチだけで朝ご飯ってどうにかなるのか…?