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リジェネが途美学園へ来る話です。この話の後に、バレンタインの話が来るんですよね…あげるの忘れてたから、ちょっと何かアレだけどまぁ。
そんな感じのお話です。
その来訪は突然で、自分でさえ少し驚いたものの……まぁ、これもありかと勝手に納得した。『向こう』で出会った彼の態度を思い出してみれば、そんなことを実行するのはいとも簡単だった。
とりあえず、寮の食堂の、椅子の背もたれにもたれながら背後にチラリと視線をやる。
「やぁ……どうしたの?何か死にそうだけど」
「死にそう……だって……?」
反論だろう、言葉を返してきた彼だったが……この状況での反論は無茶だろう。無謀と言っても無理と言っても間違いではない。何せ、彼は両側から彼の仲間に支えられてようやく立っているような状況だったのだから。どうしてこんなにボロボロなのか、本気で問いただしてみたくなるほどに。
その根性は認めるけど、と呆れながら眺めていると、机を挟んだ向こう側から疑問の声が上がった。
「……誰だ」
「あぁ、ティエリア。そういえば君は知らないんだっけね」
それは当然ではあるのだけど。『向こう』というのは留学先のことであり、そして、ティエリアは留学なんてしていない。ずっとこの学園で生徒会長などを務め、ちょっとばかり傍若無人な気がする学園所有者の後始末、あるいは彼女の行う行動に苦労を続けていたのだから。
そんなことを思って、ふと、もしも彼が学園にいなかったらと考えてみると……大変なことになりそうだとは思った。それも楽しいんだろうなと、自分はそう思うけれど。きっと大多数の人は勘弁して欲しいと嘆くのだろう。
なんて勿体ないのだろうか。こんなに楽しく、仮にだが一般の領域にあって、のびのびと出来る学園が他にあるとは到底思えない。あったとしても、両手で数えきれるほどに違いないのだ。
だからこそ、リジェネはこの学園の生徒として存在している。
楽しくなければ通ったりはしない。
「えっとね、彼はリヴァイヴ。あっちがブリングで、そっちがヒリング。僕が留学してたトコにいた人たちなんだけど」
「では訊くが、何故、そんな彼らがここにいる?」
「さぁ。何でだろう?」
彼らとは他の一般生徒よりは関わってきたとは思う。が、さすがにそこまでは分からないし、知りようもないし、推論のしようもない。
とりあえず、制服。彼らが着ている制服が途美学園のものであることから、転校したんだろうなということは、推測できたのだけど。
しかし……それにしても急なことである。
「ね、ブリング、何で君たちはここにいるの?」
「…リヴァイヴが……止められなかった」
「え?」
「……」
「…もうだんまり?いつものことだけど…」
相変わらずあまり喋らない彼に呆れ、結構仲が良かっただろう自負があるヒリングの方へ視線を向けた。彼女はお喋りな方なので、ちゃんと説明してくれるだろう。リヴァイヴ自身に訊くのは……リジェネでさえ憚られるので。それほどまでに疲れ切っていて、いい加減にベッドかどこかで寝るべきだと思う。
だからだろう、ヒリングは肩を貸したままに肩を竦めた。
「しょーがないじゃないの。アンタが来てからリヴァイヴの単独一位が二位になっちゃったんじゃない。そのせいよ?リヴァイヴがこんなにムキになってるの。勝ち逃げは許さないし、恨みは晴らすって……そりゃもう、鬼みたいな形相で言ってたわねぇ…」
「勝ち逃げはともかく……随分と向こうでもやってくれたようだな…」
ティエリアにじっとりと見られ、リジェネは素速く視線を逸らした。
完全に濡れ衣だ。テストの点数はもう仕方が無いだろう。毎回毎回、何でかは知らないがリジェネの方が点数が高いのだ。恨まれる覚えもない。偶然寮では同じ部屋になったから、たまにイタズラをかけてやったこともあったが、それもすべて優しいイタズラ。自分やティエリアが従姉たる学園所有者にされてきた事を思えば……本当に優しいイタズラしかやっていない。枕元にミミズを置いてみるとか、その程度。
なのに、よくも遠い距離をやってきたものだ。
それに……
「転校、君たちも付き合ったの?頑張るね」
「…慣れだ」
「そうそう。リヴァイヴったらたまに無茶するもの。私たちが付いていくのって、もう日常だしねぇ。引っ付くのにも慣れたって言うか」
無表情のブリングと、クスクスと笑うヒリングの間。肩を貸されてぐったりとしているリヴァイヴに……この、二人の言葉は届かないだろう。くぅ、と小さな寝息を立てて、意識を既に手放している。
頑張ってきたんだろうなぁと、その様子を見るだけで何となく分かる。
「フン……こうまでして追いかけられるとは…結構なことをしてきたようだな」
「いつもどおりなハズだったんだけどね」
「それが結構なことになるんだ…お前の場合は」
返ってきたのは、諦めを含んだ声音だった。
枕元にミミズはきついと思います。