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女の子同士仲良くしてたことだってありましたよね、きっと。
という感じの話。
04.金メダル
「ライルを喜ばせるにはどうしたら良いんでしょうか……」
「…えっと、それは…」
それをどうして自分に聞くのだろう。マリーは曖昧な笑顔の下で困惑していた。
だって、そういうのは自分に聞くよりは、まだ付き合いが長いフェルトやミレイナ、スメラギに訊いた方が良いと思うのだ。自分の所に来たというのはつまり、異性よりも同性の方が訊きやすいからだろうから。
なのに、何をどう考えて自分なのか。
そんな疑問を感じ取ったのか、アニューはごめんなさいと一度謝ってから口を開いた。
「他の人は忙しそうだったので…」
「あぁ、そういえば忙しそうでしたね……」
答えながら、マリーはブリッジに来るまでの間に自然と聞こえてきた言葉の数々を思い出していた。
先述予報士の部屋の前を通ったときは「ちょっとスメラギさん飲み過ぎですってば!」「いいじゃないこのくらい!さー、もっと飲みなさいアレルヤ!刹那もよ!」「俺は……俺はガンダムだ…ガンダーム…」「あら、刹那つぶれてる?……しょうがないわね、ちょっと上からお酒をこぼしてみようかしら。そしたら復活するわよね」「スメラギさん……素面に見えて実はかなり酔ってます!?」と。
……成る程、昨晩から姿が見えないと思ったらそこにいたのか、アレルヤ。
それから、ケルディムとセラヴィーの格納庫の前では「よ、教官さん。何やってんだ?」「だからいい加減に名前で呼べと……僕がやっているのはセラヴィーの調整だ。イアンはオーライザーの方にいるからな」「ふぅん…真面目だな」「…そういえば」「ん?」「この格納庫でフェルトにキスをしたんだったか?」「…その話は決着付いたよな?」「あぁ、ついたな。だが」「だが?」「何だか苛ついてきた」「え」と。
この後に響いた鈍い音は、とりあえず聞かなかったことにした。
それから、話には出たイアンと一緒に、ミレイナや沙慈もダブルオーやオーライザーの調整を手伝っていたはずだ。ラッセの方は…良く分からないが、ちょっとした検査をしていたはずだ。健康に見えるのにどうしてだろう、と思ったのだが。まぁ、そこは自分の知らない何かがあるのだろう。
……あれ?
「…忙しいとは少し違う気が…?」
「何か言いましたか?」
「あ、いえ。独り言です」
何でもないです。そうマリーは告げて、忙しいかどうかを考えるのは止めにした。どうせ答えなど出てこないのだから放っておいた方が楽だろう。ていうか放っておきたい。
だって、これが以前だったが長年の仇のように敵対していたCBの実態などと。
本当に思うのだが、この様子をビデオに撮って連邦に送ったらどうなるのだろうか。
「…で、どうやったらライルさんが喜ぶか…ライルさんって、ロックオンさん…ロックオン・ストラトスさんの事ですよね」
「えぇ。本名なんだそうです」
「本名、ですか」
その言葉に、マリーは少し目を細めた。
本名。自分たちとは縁遠い存在だ。
「…とりあえず、あげて喜びそうな物はありますか?常套手段としてはプレゼントがあると思うんですが。…あ、私の意見はあまり参考にならないかもしれませんが…」
「大丈夫です。そもそもそんなことはないですし、話を聞いてもらえるだけでも助けになりますから。で、喜びそうな物…ですか」
そうですね、とアニューは顎に手をやって考え始めた。
彼女のそんな様子を眺めながら、こんな考えなど必要ないのではないだろうかと、マリーは考えた。好きな者同士というのは、一緒にいるだけでも十分に満たされるし、嬉しいと思う物だろうから。
それでも相手を思って行動するのは、素晴らしいことだと思うが。
「…あまり思いつきませんけれど、そういえば、お兄さんにはあまり勝てたことがないって言ってました」
「でも、それでプレゼントどうこうは無理…いえ」
はた、とマリーは思いついた。
「金メダルか何かを象ったお菓子でも作ってみてはどうでしょう?」
たとえ仮初めの一位だろうと、好きな相手からもらえれば嬉しいのではないだろうか。今まで兄に勝てなかったというのはつまり、一位になったことがないということなのだし。
ただ問題は、金メダルを象る、ということなのだった。
「…まぁ、象り方が見あたりませんが」
「あ、それならケーキか何かを作って、その上に食用金粉でも」
「食用金粉!?」
その言葉にマリーは仰天した。いや、それがあるのは知っていたが、まさかとても近い場所からその言葉を聞こうとは思っても見なかった。
「そうと決まれば早速取り寄せますね」
「え…あ、はい」
どこか活き活きとした様子で通信を始めたアニューを、マリーが止める事など出来るワケもなかった。
実は、途中の会話文(刹、アレ、スメ)(ティ、ライ)を書くのがとっても楽しかったです。