忍者ブログ
式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

278


278


 目が覚めると、目の前に碧色の瞳があった。
 少しばかり心配そうに細められていたその目はしかし、自分が起きたと分かったからだろう、あからさまにホッとしたような光を宿した。

「起きましたか」
「……俺は、どれ程の間意識を飛ばしていた?」
「昨日の夜からずっと。今はもう朝です」
「そうか……」

 軽く頭を振って、ティエリアは窓の外を見た。成る程、確かに空は白んでいる。ということは、今はまだ朝早くということだろうか。
 などと思い、ずっと傍にいたのだろうオーガンダムに視線を戻す。

「お前、寝ているのか?」
「といいますと?」
「睡眠は取ったのかと訊いているんだ」

 出会ったばかりで何とも言い難いのだが、彼女ならずっと起きていてもおかしくないような気がした。恐らく必要があれば躊躇いなく彼女は徹夜でも何でもやるだろう。そういう雰囲気を持っているのだ。

 だから、場合によっては有り得るのだ。彼女が徹夜で自分のことを見ていた、という状況も。そしてそれを何とも思っていない、という状況も。

 それは困る。たとえオーガンダムが何とも思わなかったとして、生憎だがティエリアはそうは考えられないのだ。どんな相手であれ借りを作ったままというのは些か気持ちが悪い。居心地が悪い、とも言う。

 どうなんだ、と無言で促せば彼女は不思議そうに首をかしげて後、軽く首を振った。縦でなく、横に。

「取っていません」
「……何故なんだ。誰かがやれとでも言ったか」
「いえ、自発的にです。私はあまり睡眠を必要ともしていないので」
「…?睡眠が必要ない?」
「私は人形ですから」

 そう言われて思い出す。そうだ。彼女は人形、なのだった。生き物のように見えていたとしても、それは本当に見せかけだけ。中身は生き物とは全く別の物。頭が砕けようと身を動かす『核』さえあればどうにだってなる、そんな存在。

 ふと、そこまで考えてティエリアは眉根を寄せた。
 ……自分は、こんなことまで知っていただろうか。

「どうして気絶していたか、訊いても?」
「……いや」

 しかし思考はオーガンダムの声に遮られ、自身にとってもどうでも良かったことなので、そのままその思考は消えて無くなった。
 無くしたまま、ティエリアは答える。

「俺もよくは分かっていない」
「そうですか」
「…あぁ」

 本当は嘘だが、ティエリアは頷いた。
 頷きながら、あの子供によって気絶させられたときの事を思い返す。

 彼は、突然手を自分の額へ伸ばしてきたのだ。何だ、と思ったときには遅い。既に手は額に触れており、それによってティエリアは意識を奪われた。…それだけのこと。
 けれど、ふっと意識が飛ぶ前に、子供が口の動きだけで伝えた言葉。それがどうしても忘れられず、引っかかり、言うのをためらわせていた。




『君に夢を見せてあげる。とても大切な大切な、記憶の欠片を見せてあげる―――』




 そういえば起きる前、夢を、見ていた気がする。
 内容は思い出せなかった。

 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
02 2025/03 04
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
カウンター
プロフィール
HN:
式ワタリ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
ガンダム大好き生物。キャラも好きですが、機体も大好きです。実は(?)、今は軽く三国伝にすっ転んでます。
最新CM
[09/28 ナワ]
[06/15 オシロマミ]
[11/02 banana]
[11/02 式ワタリ]
[11/01 犬っぽい]
最新TB
バーコード
ブログ内検索
フリーエリア
忍者ブログ [PR]