[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
そういえばこのシリーズでライルって出てないなぁ、ということで。
世話役になってしまった皆様は大変だろうな…。
朝、ブリーフィングルームの前を通った時、中からげっそりと窶れた表情のティエリアが出てきたときは……そう、かなり驚いた。驚くというか、むしろ恐怖したと言うべきなのだろうか。ともかく彼の眼光には鋭すぎる光が宿っており、その視線は睨んでいないのだと分かっていても怖い。
これは軽口をたたけそうにもない。たたいた瞬間に銃が出るか、あるいはGNバズーカが出るかのどちらかだろう。後者は殆ど有り得ない様な気もするが、今の彼ならば躊躇いなく使用しそうな気もした。
「よ。ティエリア、何かあったのか?」
「……ライル・ディランディか…」
「……本当に何があった?」
声まで精彩を欠いているようだった。
さすがにここまで来れば状況の異常さくらい理解できる。軽く眉をひそめて、ライルはティエリアとブリーフィングルームを見比べた。この部屋の中で恐らく昨夜、一体何があったというのか。
「……君は知らないだろうがな…昨日から客が来ているんだ」
「客?ってどんな?」
「招かねざる客だ…全く忌々しい…ッ」
「ティエリア、そう言うことを同類に向かって言う物じゃないと思うんだけど」
「煩い。貴様など同類とも思わな……い!?」
腕を組んで苛立たしそうに唸っていたティエリアが、ハッと我に返った様子で後ろを振り向く。そこはブリーフィングルームの入り口ドア。
そこにいたのは、ティエリアのそっくりさんだった。
そっくりもそっくり。髪型が違うので区別は付くものの、まるで自分と兄のようにそっくりだった。自分たちの場合は髪型まで一緒だったので、必ずといって良いほどに初対面の人間には、どちらがどちらかと間違えられまくったが。
そういう経験があったためにライルはそれほど狼狽えはしなかった。
しかし、どうしてティエリアのそっくりさんが今、ここにいるのかが分からない。
しかも着ている服。ひらひらとしていて何とも言えない服。胸の辺りが少し空いていて、冬に着るととても寒そうな気がした。ここは冷暖房完備だから良いのだが、外に出るときは果たしてどうするのだろうか。
そんな自分の疑問は当然ながら解決するはずもなく、ライルは食ってかかるティエリアと、それをも嬉しそうに対応するそっくりさんを眺めることにした。こういうのは見る分には楽しいのである。
「リジェネ・レジェッタ!部屋から勝手に出るなとあれほど口がすっぱくなるほど言ったというのに!君には記憶能力が無いのか!?」
「失礼だな。僕にだってちゃんと記憶力はあるよ。普通よりもそこそこ良いんじゃない?」
「ならば何故忘れるんだ!」
「忘れてないよ。無視してるだけ」
「なお悪い!」
怒り心頭。その言葉が相応しい感じのティエリアだったが、リジェネと言うらしいそっくりさんは何でもないように笑っていた。ある意味図太い神経だった。
「良いじゃないか別に。僕らはバカンスで来てるんだからね」
「…バカンスでこのような場所に来るバカがいるとはな…」
「だって来たかったんだから仕方ないだろう?」
「仕方ないで片付けるな」
ピシャンと言い切って、セラヴィーのマイスターはため息を吐いた。
「……君と僕が同類なのは認めないが、だが、とりあえず同じようなタイプなのは理解している。が……やはり嫌だな」
「疑わしい、じゃなくて嫌、なの?…酷いよティエリア」
「自業自得だろう」
フンと鼻で笑うティエリア。いつの間にかドアは閉められていた。
……どうして閉める必要があるのだろうか。ライルは不思議に思った。閉めると言うことはつまり、見せてはいけない何かがあると言うことなのか。
それに、リジェネは客なのだと言うが、ティエリアの態度は客に対するそれではない。何よりも客が来ていて自分に何も知らされないのは妙だろう。自分だってトレミーのクルーなのである。
気になることばかりだ。
だが。
「…なー、ティ」
「無駄なことは訊くな。訊いた瞬間に撃つ」
「申し訳ありません」
思わず平射。どうしてこんなに腰が引けているのだろうか……変な条件反射が身についてしまったような。物悲しくは思うが、だからといってどうと言うこともない。仕方がない、全てはそれで片付けられてしまうのだった。
それにしても、名前すら最後まで呼ばせてもらえないとは。
「俺って信頼されてないのかなー…」
「何か言ったか?」
「…いいえ、別に」
はぁ、と息を吐いて、もうこの話に首を突っ込むのはやめにして、ライルは食堂へ向かう歩みを再開した。
この後ライルは食堂でアニューと一緒に朝食です。