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マズイ、とアレルヤは目の前の風景を見て思った。
マズイ。非常にコレはマズイだろう。
何故だか分からないがミレイナが今この場に来てしまったことは、自分たちにとっても彼女にとっても、とてつもなく不都合な事だった。
こんな状況の博物館に入ってきてはいけない。犯人は現場に戻る、とよく言われている通りに彼女が戻ってきたのだと思われてしまうかもしれない。無茶苦茶な論理と言えば論理だが、手がかりが無ければ手がかりかもしれない相手を放っておくこともないだろう。
つまりはそういうことで、このままではミレイナが危ない。
ほら、ヒリングと言うらしい月代の纏う空気が一瞬で戦闘態勢に変わった。
この相手を人間であるミレイナがどうにかするのは、確実に無理である。
「ハレルヤ…」
「分かってるっての。あのガキにはたまに色々手伝ってもらったしな」
「いち、にの、さん、でね?」
「了解」
ニッとハレルヤが笑い、アレルヤはゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
いち、に、
「さんっ!」
「行くぜぇっ!」
その瞬間、ハレルヤによって世界と隔離されていたアレルヤたち周辺のフロアが一瞬にして世界に還り、世界と繋がったことによってそのフロアにいたアレルヤとハレルヤを月代たちが把握できるようになった。
彼らから見れば突然に現れた自分たちという存在に戸惑っている様子の彼らを無視して、アレルヤとハレルヤは何が起こったのか分かっていない様子のミレイナの元へと走った。このまま彼女を連れて博物館から走り出る。
「っさせるかぁっ!」
「ちょっと待てヒリング、」
「待たない!」
背中でそのやりとりを聞きながらハレルヤに目配せをすると、片割れは分かったというように視線で返して、右手の人差し指を一本、つぅと線を引くように空中で動かした。
結果。
月代が放った、恐らく異端からあらかじめ手に入れていた力であろうカマイタチは『世界と世界の断層』によって阻まれ、虚しく四散した。
それはハレルヤの力。世界のあり方を軽く変えてしまえる力。
今、ハレルヤは自分たちと月代たちの間の『世界を切った』。そうして一つだった世界の間に『溝』を作り『壁』を作り、誰もこちらへ来れないようにと。
全く、うらやましい力だ。
「ミレイナ、こっちに来て!」
「え、あ、はいですぅ!?君は街にたまに出てくる少年です!?」
「その話は後でやってやる!からとっとと足動かせ!」
「ハプティズムその2さんですぅ!?なんでいるですか!?」
「それも後で話すからっ!」
多分、あの世界の断層は時間がたてば元通りになる。だからハレルヤだってここまで急いでいるのだろう。断層が消えて月代二人が来れるようになってしまえば、こちらとしても中々に面倒なことになってしまうだろう。
そんな機具もあったので、事情説明は後回しに三人は博物館を走り出る。
その後の行き先は分からない。とにかく、相手に捕まらない場所へと逃げる必要があるのは事実だった、