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いい加減にカテゴリーに「イノベイター」を入れるべきではと思えてきました2009/03/06現在。
だって何だかイノベイターがやけに多い…気がする。
05.オークション
「人間というのは、オークションというものをするんだそうです」
唐突にそう切り出したのはリヴァイヴ。
それを耳にして、ヒリングが最初に返した言葉は「アンタ、突然何言い出すの?」だった。別に間違ってないと思う。唐突も唐突、前後左右上下まで繋がっていない彼の言葉だったのだから。まぁ、何の会話もない状態から前後左右上下斜めが繋がった言葉を紡ぎ出す、というのも中々に難しい話だとは思うが。それはそれ。
生真面目にガラッゾの取扱説明書を読んでいたブリングが顔を上げ、とても楽しそうなリヴァイヴの方を見た。
「…行ったのか?」
「え?」
ブリングの言葉を思わず聞き返すと、帰ってきたのは彼からの返事ではなくリヴァイヴの肯定。いや本当ですか。
「そうなんです。行ってきたんですよ」
「そうか」
「そうか、じゃないわよブリング!どうして分かるの!?エスパー!?」
「いや、我々はエスパーじゃなくてイノベイター…」
「そーいうことを訊いてるんじゃないの!」
イノベイターだから分かったというなら、どうして自分が分かっていないというのだ。
ぶぅっと頬をふくらませていると、ちょんちょんと肩をつつかれた。言うまでもなくブリングの手……かと思いきやそうでもなく、それはリジェネの…って。
「リジェネ!?」
「やぁ、ヒリング。久しぶり」
「久しぶり、じゃないわよ!何でここにいるの!?」
「あぁ、僕と一緒に来たんですよ。オークション会場であって」
いや…そうだとしても、気配を感じさせずに自分の隣にいたことが衝撃的なのだけど。そっちの方がむしろ気になるポイントなのだけれど。
言ったところで意味はないだろうが。だって答え、絶対にないし。
はぁと息を吐いてから腕を組み、ヒリングは壁にもたれかかった。
「で?リヴァイヴは誰と行ったの?存在自体知らなかったアンタが自力で行けたとは思えないもの。誰か人間と一緒だったんでしょ?」
「カティ・マネキン大佐と」
「えぇ!?いーなぁ!いーなそれ!」
カティ・マネキンといえば自分たちの今のところの司令官。人間にしては結構話が分かるし、色々とお世話になっている相手だ。
そういうわけなのでヒリングは割と彼女には懐いている。女性の軍人がそもそも少ないこの隊だし、そういう点からもちょっと仲良くなれた。イノベイター同士といえど、やはり異性となれば話せないことだってある。
「どのような場所だったんだ?」
「軍人が集まってのオークションでした。中でも高値が付いたのがガンダムの模型でしたね……しかも四年前の型」
「え?何で四年前?」
しかも、軍で。どうして敵であるガンダムの模型が。高値どうこうの話よりはまず、そもそもどうしてそれがあるのかというのが気になるところだ。
どうなの?と視線を向けるとそうですね、と顎に手を当てる彼。
「確か……四年前、どこかの技術屋が軍の友人のために作ったのだとか。今ではその彼はガンダムの模型を作るのを止めたらしく、プレミア価格が付いているのだそうです」
「へぇ…誰が競り落としたの?」
この問いにはリジェネが答えた。
「今回はミスター・ブシドーがね。四年前はもっと凄かったらしくて、どこかのハムとマフラー巻いた少年が競い合っていたそうでさ、その時の価格が最高額だったらしいよ」
「マフラーを巻いた少年?って少年が軍に入ってるの?」
「うぅん、紛れ込んだらしい」
ガンダムが欲しかったんだって。よくやるよね。
リジェネはそう言って肩を竦めた……が。
ヒリングは彼が持っている物を認め、スッと目を細めた。正確に言うと、じっとりとリジェネを見た。
「今のアンタが言える言葉じゃないと思うけど?その白いの、ガンダムでしょ」
「うん。ティエリアが乗ってるやつ。技術屋さんの作品じゃないけどね、結構上手に出来ていると思って。誰が作ったんだろう?」
関節を曲げたり伸ばしたりして遊びながら、リジェネは首をかしげる。が、正直こちらとしてはどうでも良い。完成度が高いのは認めるのだが、本当に何というか……何とも言い難い気分である。
「リヴァイヴは何買ってきたの?」
「僕は見てきただけです。見るだけでも割と楽しいですよ?」
イノベイターたちは世間知らずだと良い。