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風蘭(フウラン)
花言葉:霊感、恋の成就、など

ちょっと色々整頓してたら書いていた奴を発掘したので。
今回はフルカラー劇場でたんくとノワール。




19:風蘭 (フウラン/異端児)
 キュルキュル、というキャタピラが回る音が近づいて来たことに気付いて、ノワールは読んでいた本から顔を上げた。
 くるりと周りを見渡してみれば、見える範囲にはガンタンクしかいない。ということは、あの音は彼の移動音だろうか。
 それならば、と再び本に視線を戻すことにする。ここは公園で、自分がいるのは遊具から離れたベンチの上。そして彼が自分を尋ね来る理由も無いだろうし、声をかけずとも良いかと判断したのだ。多少、本の続きが気になって仕方がなかったと言う心情も、判断の一因として存在を主張しているが。
 だが。
「あ、いたいた。ノワールー」
 意外な事に、ガンタンクからの呼びかけがあった。どうやら、そんなことがあるわけがないだろうと予測の外に追いやったそれが正解だったらしい。
 珍しいこともあるものだと、再び顔を上げて本を閉じる。その頃には、ガンタンクは直ぐ目の前の場所まで来ていて、こちらが何かと尋ねる前に、当然の様に隣に座ってきた。……座る前に断るなりしろと思わないでもないが、まぁ、今日は連れがいるわけでもないし良いだろう。
「何の用だ?」
「こわくないこわいはなし、して!」
「……怖く無かったら怖い話じゃないだろう」
「でも、こわいはなしはこわいからいやだけど、こわくなかったらさいごまできけるかなって。そうやっていったら、だいじょうぶになるかもしれないよね?」
「あぁ、怖いのが苦手なのを克服したいのか」
「うん。ノワールはこわいはなしすきだし、いいはなし、しってるかなっておもったんだよ」
 どう? と、ガンタンクは首を傾げる。その顔には期待の色が強く浮かびあがっていて、引き受けてくれるよね? ね? と、言葉よりも有言に、彼の気持ちを表していた。
 そんな姿を見ていると、断り辛い……とは思うが。
「断る」
 きっぱりとノワールは否を示した。
「え、どうして!?」
「怖い話をして怖くなったら撃つだろう、お前は!」
 そう。彼の要求を飲むには、その点があまりにもネックになりすぎていた。
 普段はそこまでひどくはないものの、ふとした弾みで両肩の大筒から砲弾が発射される。その威力が弱ければまだ良かったのかもしれないが、そんなことは全然無く、むしろこのコロニーに住む者たちの中でもトップクラスの火力ときている。
 これでは警戒するなと言う方が無茶であろう。
 そんな思いを込めた視線を送れば、彼はぶんぶんと勢いよく首を振った。
「うっ、うたないよ! がまんする! だからよんで!」
「ほう、我慢出来る自信があるのか」
「……あんまり」
 問い返すと途端に落ち込む両肩に、何だか悪いことをしているような気になる。
 だが、だからといって、怖い話の読み聞かせをしてやる気にはなれない。
 ならば、さて、どうしてやるべきか……と、考えること数秒。
「……読み聞かせはしないが、本を貸してやることはできるぞ。比較的怖くないやつを選んで持って行ってやろうか?」
「ほんとう!?」
「あぁ、本当だ」
 一気に明るくなった表情に、苦笑しつつ。
 さて、何を貸してやろうかと、ノワールは思い巡らせ始めた。





練習して泳げるようにもなったし、たんくは苦手を克服できる頑張れる子だと思う。

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