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月下美人(ゲッカビジン)
花言葉:はかない美、繊細、など

神秘的と言われてこのひとしか出て来なかった。
今回はフルカラー劇場で、ガルマドップ、シャア、ララァさん。





15:月下美人 (ゲッカビジン/神秘的)



 こほ、という小さな咳き込む音に、ガルマドップはクッキーを食べるのを中止した。
 音の聞こえた方へと視線を向けてみれば、そこには口元に手を当てているシャアの姿があった。ちなみに気分で外見をころころと変えるこの友人は、今回はオーソドックスにザクの格好をしている。昨日は百式だったらしいが。
 そして、明日もシャアの格好をする予定らしい友人に、尋ねてみる。
「何だ、風邪でも引いたのか?」
「自覚は無かったがどうやらそうらしいな。最近一気に寒くなったし、そのせいだろうが」
「ふむふむ、引き始めか。風邪は最初が寛容と言うし、大人しくしていたまえよ」
「言われんでもそうするつもりだ。だから、お前も妙な事態を引き起こすんじゃないぞ」
「さてはて、そのようなことを私に言われてもな」
「……他に騒動が起きなければ問題ないか」
 その口ぶりからして、どうやら彼にとって自分とは、事件が起こったら事態を掻きまわしに行く愉快犯であるらしかった。実際、何回かそういうことをやったりしたこともあったという自覚は、ないでもないのだが。
 しかし、そう考えられているのならば、その期待には添わねばなるまい。
 何をしてやるのが良いだろうかと考え出したところで、この場にいる最後の一人がふわりと紅茶のティーカップを浮かせた。手の無い彼女のこと、おそらく挙手の代わりだろう。
「シャア、良かったら私が映しましょうか? 万が一にも悪化したら嫌だもの」
「ん? あぁ、すまんな。頼めるか、ララァ?」
「えぇ。やってみるわね」
 ララァがそう言った瞬間、壁際に置かれていたテレビの電源が付いた。彼女が念じたことが、実際に現象として引き起こされたのである。恐らく電源を付けたのと同じようにチャンネルも変えることができるのだろうし、彼女がいればリモコンは不要そうだ。
 などと思っている間に電源は再び切れ、ララァが少し不安そうにシャアに話しかけた。
「……シャア、どうかしら。自分以外に試したことがないから、上手くいったか分からないんだけれど、治ったのかしら?」
「そうだな……あぁ、朝から感じていた喉のイガイガが無くなったようだ」
 喉ってどこにあるんだというツッコミの入りそうな台詞と共に、彼はにこりと微笑んだ。
「ありがとう、ララァ。おかげで助かった。また風邪をひかないように気を付けないとな」
「そうね。じゃあ、寒さ対策に、少し早いけど炬燵でも出してみましょうか」
「いや、それは少し早すぎるような……あと、炬燵は出てくると離れられなくなる、ある意味呪いのアイテムだからな。出すのはできるだけ遅くしよう」
「ふふ、なら、そうしましょうか」
 仲良く言葉を交わす二人、その片割れからは風邪の気配は最早感じられない。
 どうやらもう、本当に良くなったらしいと頷いて、ガルマドップは再びクッキーを齧り始めた。






ララァさんなら、自分以外でも映して治すことができそうだと思った結果がコレです。
風邪に関してはお医者様要らずですよね。
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