チビスターズ第三話 ②
あぁ、ヴェーダ。
今、自分は酷くマイスター失格なことを考えています。どうか、許してください。
……という懺悔をしてから、思っていたことを口に出す。
「紛争を起こすのなら……早く起こせ」
紛争が起こらないのでは……介入のしようがない。
予定では、もっと早くに事は起こるはずだったのだ。だというのに、どうしてここまで時間がずれ込んでいるのだろうか。介入される側は準備で忙しくしているかもしれないが、介入する側としてはひどく退屈だ。しかも今回はとっとと終わらせてしまいたいのにこれでは、イライラするしかないではない……いや、だからそういうことを思うのはマイスターとしてどうかとは思っているけれど。
爪を噛みたい気分だったが、残念ながらパイロットスーツのせいで無理だった。手まで覆っているから、やりたければ上半身だけでも脱ぐしかないが……いつ紛争が起こるともしれない状況で、それはマズイというか、完璧主義のティエリアからすればあり得ない行動というか。
さすがにヘルメットは取っているが、これは宇宙でもあるまいし、圧倒的な性能で相手を圧倒できるガンダムだから特には必要ないからである。保護しなければいけないほどの敵は、まだあまりいないから。
その、一部例外の強敵の例としては…尋常じゃないしつこさのフラッグだとか、優れた乗り手の乗っているティエレンとか、それの中でもピンク色の性能が高いのだとか……AEUには優れた乗り手はいなかったように思う。傭兵の所には、一人ほどイナクトに乗っているので強いのがいたと記憶しているが。
『もういっそのこと、紛争の準備してるってことで行くか?』
「いや……だが、どこに潜伏しているかが分からない」
ハレルヤが珍しく良いアイディアを出したが、そういうワケなので不可能だった。できるものならティエリアだってそうしたい。しかし、そうはいかないところが世の中の不条理なところだろうか。こればかりは、ヴェーダにだってどうしようもない。
こんなにミッションをもどかしく思ったのは、初めてかもしれなかった。いつもなら、どれだけ時間が長引こうと一向に……ではないが、あまり気にしなかったのに。気にするときと言ったら、せいぜい宇宙に帰れるときか、戻る場所の近くにアレルヤがいるときくらいだ。それ以外は、どうでも良かった。
『実は紛争の情報がデマでしたってなオチはねぇよな?』
「クリスティナ・シエラの腕は、君だって知っているはずだろう」
『……まぁ、そりゃそうだけど、よ』
モニターに映るハレルヤは、眠たそうに欠伸をした。
本来なら注意でも何でもして、諫めなければいけないだろうが……その気もうせている。というか、ティエリアも結構似たような気分だ。
『にしても……こういうとき、アレルヤがいねぇってのは変な気分だな……』
「どういうことだ?」
『暇なときは、だいたいアイツから話しかけてくるんだよ。そゆわけで、俺はミッション中に退屈したことはねぇ。鬱陶しいとか思ったことはあるけどな』
「……随分と、良い思いをしていたようだな」
早く、ミッションが終わればいいと、今、一番強く思った。
そうしたら、アレルヤに会える。
…それに、ハレルヤを思い切り殴ることができるから。
一時休戦中とはいえ、殺気くらいは抱くのだ。
「GNバズーカで撃ってもいいが……キュリオスにまで当てるのはな…」
『……何の話をしてやがる』
「別に。どうやったら害虫を駆除できるか考えていただけだ」
『俺から見たら、テメェらのほうが害虫だっつーの!』
「俺は別に、君のことだと言った覚えはないが」
『流れで分かるわッ!』
何だか、ミッション放り出してケンカ始めそうな……。
ティエリアがいるから、そうもならないかも…だけど、ミッションが終わったら……ねぇ?
止める物は何もありません。