332
「では、これからキュリオスとアリオスを探しに行こうと思う」
「メンバーどーする?」
改まってヴァーチェが言うと、ひらひら手を振りながらケルディムが言った。先ほどというか、とにかくハロ捜索隊はメンバーを選ぶ時点で色々と失敗していた感があるので、成る程、彼の言葉は大切な事柄であるといえる。
「…まず、セラヴィーは留守番だ。見張りにダブルオーとデュナメスと俺を付ける」
「えぇ!?ちょっとヴァーチェ、何そのすっごーく厳重な警備体制は!?僕ってそんなに信頼とか信用とか信頼とか信頼とか無いの!?僕と君とって対応型なのに、それってかなり酷くない!?」
「黙れ」
妥当な言葉に噛みついてきたセラヴィーをやかましく思いながら、ヴァーチェは息を吐いて対応型のデコに手刀を食らわせた。
「った!?」
「勝手にはぐれたあげく人まで巻き込むようなヤツに信頼があると思うな」
「…自業自得」
「ダブルオーまで!?え、でも僕って結構ちゃんと僕の仕事を果たそうと頑張ってるんだよ!?だから刹那が見つかって嬉しかったわけで…」
「だから何だ」
セラヴィーが『過去の記憶を宿す者』を探しているのは知っている。
知っているし、それが彼の役目と言えば役目なのだと言うことも、分かっている。
が、先ほどの彼の役割はそちらではなくて、あくまで『キュリオスとアリオスと一緒にハロとHAROを探しに行くこと』だったのである。
「存在意義も大切だろうが、それに構い過ぎて現在の責務まで忘れるな」
「だ…だってさ、ほら、キュリオスとアリオスがいればもう僕って用無くない?あの二人って二人で一人くらいの勢いだし、むしろ僕がいた方が邪魔なんじゃないかなーって…」
「言い訳もそこまで行くといっそ見事だな」
普段は他人の都合など気にさえしないくせに、こんな時だけやけに都合の良い。
対応型とはいえ、かなり呆れる事態だ。
ハァとため息を吐いて、ヴァーチェはエクシアとケルディムの方を向いた。
あと、人形の中で役割を告げていないのは二人だけである。
「お前たちは二人でキュリオスとアリオスの捜索をして欲しい」
「了解した……が、刹那はどうするんだ?」
「俺か?」
唐突に話を振られて一瞬くらい戸惑った様子だった刹那だが、直ぐに決めたらしく、残る、と言った。確か彼は宿に泊まっていたはずで、そろそろ宿のメンバーに説明などをしに行きたい頃だとは思うのだが…本当に申し訳ない。
多分でなくても、刹那が残ると言ったのはセラヴィーの相手をしてくれるためだ。何だかんだで彼は世話見が良い。
「すまないな」
「いや…気にするな」
返答まで大人。本当に、セラヴィーに爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい気持ちである。
……まぁ、そうしたところでセラヴィーに変化があるとも思えないのだが。
そういうのが分かってしまう分ほど、やはりヴァーチェは対応型をどうにかしなければという義務感を覚えるのだった。結局何も出来ないし、しても意味がなされなかったりするが。
「では、エクシアとケルディムは直ぐにでも行動を初めて欲しい」
「分かった。行ってくる」
「出来るだけ速く見つけよう頑張ってくるぜ」
そんなやり取りの後、ヴァーチェは出て行く二人を見送った。
もちろん、セラヴィーに関節技をかけながら。
何となく、刹那を見ていたら対応型をこういう目に遭わせたくなったのだった。