クリスティナは、近々行われるミッションの下準備のため、ブリッジでハッキングをしていた。今回情報を探っているのは、AEUの軍のメインコンピューター。AEU内のMSの分布や治安の状況を調べているのだ。
少しでもマイスターたちの行動の助けにするために、それからミッションプランを立てやすくするために。後者の方にはあまり、必要はないけれど……それでも無いよりははるかに良い。
「ねぇ……クリスティナ」
「ん?」
そんな時だった。クリスティナを呼ぶ声がしたのは。
声のした方を向くと、そこには手を後ろに回して目をそらして、頬を少しだけ赤くして立っているフェルトの姿があった。
どうしたのだろうよくと見てみると、彼女の背中から、ラッピングした可愛らしい袋がのぞいているのに気づいた。
それを見て、それから今日の日付を思い出して、どういうことか何となく察しがついた。
(……なるほどね。それで照れてるワケか)
気づいてしまうとそれは、とても彼女らしいというか。
笑みがこぼれそうになる顔を、何とかいつも通りの表情にする。ここで笑ってしまったら、せっかく彼女が(多分、だけど十中八九どころか99%正しいと思う)こっそりと自分を驚かせようとしてくれているのに、それを無駄にさせてしまう。
リアクションをするとしても、それは彼女がことを実行してしまった後。
近づいてきた彼女に、努めて平静を装って問いかける。
「どうかしたの?」
「……今日はクリスティナの誕生日、だったよね…」
「うん。そうだけど」
「………………………お誕生日、おめでとう」
そう言って、フェルトは背中に隠していた袋をこちらに差し出してきた。やっぱり、顔をそらしたまま。
微笑んでそれをうけとってやると、ようやく彼女はおずおずと、だが顔をこちらに向けてきた。反応が気になるらしい。
「ありがとう。開けてみてもいい?」
「うん……たいしたものじゃ、ないけど」
「フェルトのくれた物なのに、たいしたものじゃないわけ無いよ」
くすりと笑って紐をとき、袋を開いてみると、中には可愛らしい形のクッキーがたくさん入っていた。どれも、手作りのようだ。
「どうかな……。スメラギさんと一緒につくったんだけど」
「凄いよ……ありがとう、フェルト。大事に食べるね」
……何だか、暖かな気持ちになった。
「ねぇ、フェルトの誕生日はいつ?」
「え?……十二月二十八日だけど…」
「じゃ、お返しはその日にねっ!」
「そんな……悪いよ…」
「大丈夫だって。楽しみにしててね、凄いプレゼントを用意してあげるから!」
リヒティに祝ってもらおうかと思ったけど、結局フェルトに。
この二人、親友だってオフィシャルファイル4に書いてあったから…。