04.飴玉
一人でのんびりと食堂にいると、いくつかの足音が近づいてくるのが聞こえた。楽しそうな声と静かに答える声。最低でも二人いるし、その二人が誰なのかも声から分かった。
何故に食堂にいながら足音が分かるのかというと、それは酷く簡単なことだった。食堂のドアは昨日から壊れているのである。理由は不明だが、この近辺でミレイナがハロと戯れていたという目撃情報があるので、おそらくそれが原因だろう。ふと見ればドアの近くにちょっとしたへこみがあったのだ。
いや、にしてもどうしてぶつけたりしたのか。さらに付け加えると、どうしてドアがへこむくらいの力でハロがぶつかったのか。
疑問はつきることがないが、恐らく触れない方が良いのだろう。
その辺りの付き合い方は流石に今までのふれ合い期間で理解した。
「それでね、刹那…あ、ライル」
「よ、アレルヤ。刹那もティエリアも」
「…いたのか」
「部屋にいても暇なんでね」
ふぁあ、と欠伸をしながらライルは答えた。暇なのは本当で、ちょっと暇つぶしに艦内を歩いていたらいつの間にかここに落ち着いたと、つまりはそういうことなのである。今はコーヒーを片手にのんびり休憩だ。
対して三名は、きっと朝食でも取りに来たのだろう。そういう時間帯だ。
「…あの、ライル」
「ん?どうかしたか?」
自然に向かいの席に腰掛けたアレルヤの、視線が自分ではなく別の方に行っている。
何だろうと視線を辿って……納得した。
コーヒーのカップの隣に置いてあったビンを手に取り、ライルはそれを軽く振って見せた。中の球体がコロコロと動く。
「気になるか?」
「……少し」
「嘘付け。とっても気になるって顔してるぞ、お前」
「え!?」
自覚がなかったらしいアレルヤは驚きの表情を浮かべ、両脇に座っていた刹那とティエリアを交互に見やった。意見を求めているらしい。出来ればライル自身の意見を否定してくれるような言葉が欲しいのだろう。気恥ずかしさに頬が軽く赤くなっているし。
だが、こういうときはとても正直な二人である。
「いや、十分に気にしていただろう…」
「同感だな」
「……そうかなぁ…」
両側からの肯定に少しうなだれたアレルヤは、ちょっとばかり落ち込んでいるらしかった。意味など無いだろうが、何となく落ち込むポイントだったのだろう。
子供みたいだと想いながら、ライルはビンのふたを開けた。
「一個ぐらいならやろうか?」
「え、良いんですか?」
「おう。ほら、手、出せ」
「あ、はい」
素直に差し出された手にオレンジ色のあめ玉を乗せる。ここはやっぱり、アレルヤの制服の、機体の色の橙を出すべきだろうと思ったのだ。
そして、アレルヤにあげて二人にあげないのも問題かと思ったライルは、とりあえず刹那とティエリアにもあめ玉を押しつけた。ちなみに色は両方とも黄色である。生憎だが、このビンの中に青と紫は無い。
「えっと…じゃ、いただきます」
「フン。勿体ないからもらってやる」
「……」
微笑みあめ玉を口に入れるアレルヤと、素直にあめ玉をなめ出すティエリアと、何だか警戒しているような表情の刹那。三者三様の行動だが、この中に一つだけ間違った行動があるのだと、果たして行動している彼は気付いているだろうか。いや、絶対に気付いていないだろう。
正解はアレルヤと刹那である。
「っ…!?」
不正解だったティエリアは、バッと口元を押さえた。
思わず、ライルは吹き出す。
「は…ははっ!まさかこんなにあっさり引っかかるとはな!」
「ら…らひる…何味のあめ玉なんら…」
あまりの衝撃にろれつが変な方向に回っているティエリアに、ライルはにこりと微笑んで答えた。
「唐辛子。ほら、黄色いチューブで売ってるあれの味」
「…ライル、返す」
「ほいよ。刹那、アンタの行動は正解だったぜ」
「そうか……」
心底ホッとしたような刹那の表情に、ライルはまた吹き出した。
ふと見れば、ティエリアはアレルヤに背中をさすってもらっていた…何か違う気が。
カテゴリーは恐らくむしろマイスター。
でもアレルヤにはちょっと甘い仕様…てーかあれですね、何て言うか、全体的に00のメンバーはアレルヤに甘いですよね…このサイト。
…うん、別に良いじゃないか!平和が一番さ!