15.屋上のフェンス越し
「学校、ねぇ」
そう言って、彼は溜息を吐いた。
「データでしか見たこと無いしな…あんまり分からん」
お前は知ってるか?
そう訊かれて、アレルヤは首を振った。
知らない。そんな場所は夢物語の中。
「そっか…そうだよな……悪い、変なことを訊いて」
気にしないでください。
答えると、彼の顔が綻んだ。
「良いヤツだよな、お前って。キュリオスが、大好きッ!…って言う理由が分かるよ」
それはそれは……では彼に、ありがとう、と伝えておいてくれませんか?
「そのくらいのミッション、簡単に終わるな」
ウインクと共に返ってきた返答。
どこまでも『兄』な言葉に、頬が緩む。
これは何だろう。パイロットの性格も、反映されているのだろうか。
だとしたら、キュリオスには自分とハレルヤの性格が、ということになるが……。
そこの所はどうなっているのだろう。
考えて、あまり知りたくないような気がしてきた。
何か…結果が怖い。
二人分、反映されていそうで怖い。
「で、最初に戻るけど」
ちらり、と彼の視線が下を向いた。
フェンスの下の、四階分下の、地上の方へと。
「学校って、概ねこんなんなのか?」
聞こえてくるのは、楽しそうな声。
見えるのは、遊んでいる子供たち。
「データではこんなのだって有ったけど…実際はどうなんだ?」
その言葉に少し考え込み、口を開く。
多分、こういう物だと思います。
すると彼はふぅん、と呟き、視線を元に戻した。
「平和なんだな。撃つ対象がない」
なかなか物騒な事を言いながら、彼は瞳を閉じた。
「俺の出番が無いって事は……それは…幸せって事なんだろうな」
殺すことも殺されることもない。
理想を追いかけることもない。
平和で安息が確約されている。
そこは既に楽園。
「何もしなくても、こうなってくれたらいいんだが…無理な望みか」
そして、皮肉な笑み。
「なんたって、俺たちが登場した世界だからな」
誰かがキッカケを与えないといけないんだよな。
呟きは風に乗って。
ふとアレルヤが下へと意識を向ければ。
フェンス越しの明るい喧噪が、ここが夢なのだと、脆い場所だと語っていた。
夢の中に夢物語。
今回はわりと分かり易かった…かもしれません。今回は
デュナメスです。
本当に機体が好きだな……ワタリは。
けどやっぱり、機体にも心があって欲しいというか……何度も言っている気がするけど…けど、彼らも色々と思ってるんじゃないかなって。ある意味、直接実行しているのは彼らなのですし。