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普通のお題というのも久しいですかね…。
たかが1㎝、されど1㎝、という話です。
05.1cm
たまに思うことがある。
どうしてあの、四年前のあの頃。
どうして。
どうして自分は……
「何でもっと牛乳を飲まなかったのか……」
「えっと刹那……?」
突然のダブルオーのマイスターの言葉に、アレルヤは反応に困った。
どうして突然そんなセリフ。
「……どうかしたの?」
「悔やんでも悔やみきれないんだ……」
「刹那……」
何だかとても深刻そうで、アレルヤはとても心配になってきた。その内容にではなくて今の刹那の様子について、だが。向かい合っているから分からないが、背を向けられたらそこから哀愁でも漂ってきそうな気配だった。
とりあえず、本当に牛乳を飲まなかったことに後悔しているのは分かった。
分かったが……。
「何かあったの?」
「……あと2㎝で良かったのに……」
「2㎝…身長のこと?」
「あと2㎝……それだけで俺は……四年前から変わらない不名誉な座から…っ」
「……あぁ」
成る程、とアレルヤは頷いた。さすがにそこまで言われたら気付く。
そういえば以前から刹那は背丈について思うところがあったようで。周りにいたのは基本的に背の高いメンバーだったからだろうが、背が低いことにちょっとしたコンプレックスを抱いているように見受けていた。マイスターの中で最も背が低いことも、何気に気にしていたようだったし。
そして今。確かに刹那の背は伸びた。四年前とはとても違う。成長したのだとアレルヤは嬉しく思ったし、背が伸びたことに関しては刹那にとっても同じだっただろう。
だが、足りなかったのだ。
あと2㎝。
ティエリアの身長まで。
「……別にアレルヤより大きくなろうとは思ってなかった」
「けど、ティエリアよりは大きくなりたかったんだね……」
「……昔口げんかをしたときに『チビ』と言われたことがあった」
「言い返したかったのかい?」
「見返したかったんだ……」
前言撤回。背中じゃなくて刹那全体から哀愁が漂い出てる。
これはマズイなぁとアレルヤは困り果てた。対応の仕方が本気で分からない。どうやったら刹那を元気づけることが出来るかの見当が、全くと言って良いほどに付かないのだ。自分の方は小さくて悩む、という経験がないから。
こういう時、ロックオン……ニールなら上手く慰められたのだろうか。ふと、自分たちのまとめ役だった彼のことを思う。彼ならもしかして……いや、無理な気がする。こうなった刹那の気分を浮上させるのは彼であれ困難なのではないだろうか。
ということはつまり、万事休すであり。
「せ……刹那、1㎝くらいなら伸びるかもしれないよ?」
「1㎝じゃダメなんだ…」
ちょっとした希望的観測を口にしたが、想像通り効果はなかった。
重傷だった。
それも、とてつもなく。
「……今からでも牛乳、毎朝飲んでみる?」
ダメ元でもやるだけやってみてはどうかとアレルヤは最終手段一歩手前の案を挙げた。
ちなみに最終手段は『ティエリアの身長を縮める』事。成長期を過ぎた人間の背を伸ばすよりは、その後のどんどんと背が縮んでいくという過程を使用した方が作戦達成の可能性は、高い。しかし言ったら実行されそうなので怖いので言わない。
どうする?と目で問いかけると、微かに頷く刹那。
「……そうか。そうだな…」
「頑張ってみるかい?」
「あぁ。すまないな、アレルヤ。こんな話に付き合わせて」
「気にしないで。仲間でしょう?」
それに、話してもらえてちょっと嬉しかったから。
心の中で、アレルヤはそう付け加えた。
きっと刹那にとって身長の話はコンプレックスだと。