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何気に池田さんも好きです…けど、最近出てきてませんよね、池田さん。
どこにいるのだろうか……。
05.駅前の喫茶店
仁王立ちで腕を組んで怒りを隠そうともしない女性のカタロン構成員。
その目の前に大人しく正座をして神妙にしている元アザディスタン第一皇女。
もう一人、正座をさせられている元ジャーナリストあるいは元特派員。
何事だと言いたくなるような三人の様子を目にして、クラウスは目を丸くした。何とも珍しい光景だ。珍しい、というのはこの場合、正座をしているメンバーの中に池田が入っていることである。いつもはシーリンとマリナの二人だけのハズなのだが。いやはや、本当に珍しい。場所も珍しく、どうしてだかMSをおいてある場所。他のMSの整備をしていた構成員たちもポカンと三名を眺めている。
ふと、ちらりとこの場所への出入り口へと視線を向けると、そこにでは子供たちが不安そうな顔で三人の様子を伺っていた。成る程、どうやら子供たちはこの件がどういったものか理解が及んでいるらしい。ということは、もしかしたら彼らも事に一枚噛んでいる事も有り得るだろう。
「あらクラウス。帰っていたの?おかえりなさい」
「あぁ。ところで……これは?」
こちらに気付いたらしいシーリンの傍によって、正座を続ける二人を見やれば……あぁ、と彼女は頷いた。頷いて、頬に手を当てて溜息を一つ吐いた。
「またマリナがしでかそうとして……」
「……今度は何を?」
「近くの国までジープに乗って一人で行こうとしていたの」
「……それは」
無茶を通り越して無理という物ではないだろうか。
その様子を想像して思わず顔を引きつらせていると、再びシーリンが溜息を吐いた。
「いえ……本当に、出て行くところを発見できて良かったわ。この軽装で、しかも一人で行こうとしているんだもの。危険なんてものじゃないわ」
「で、何で彼まで?」
マリナが正座をしている理由は分かった。が、それでは池田が正座をしている理由までは語られていない。明らかにするにはさらなる説明を求める必要があった。そうしなかった場合は推測などが必要となるだろうが、残念ながら全くと言っていいほどに見当が付かない。むしろ付く人がいたら紹介して欲しいくらいだ。
「……マリナがその国に行こうとした理由、分かる?」
「いや。何だったんだ?」
「その国の駅前の喫茶店のケーキがとっても美味しいのだそうよ」
「……つまり?」
何となく流れは分かったのだが、あまり認めたくない。
だから最後の悪あがき、とばかりにシーリンに問いかけたのだが。
「その喫茶店の情報を、あろうことかマリナに伝えたのが彼なのよ」
……本当に悪あがきだった。
想像したとおりの事態に思わず天を仰ぐと、だって、と耳に届いたのは第一皇女のささやかな弁明。
「聞いてしまったのだから行くしかないでしょう?シーリン」
「……それは貴方の中だけの事よ、マリナ。とりあえず一般的には有り得ないと思うわ」
「でも……折角子供たちにも食べさせてあげたいと思っていたのに…」
あぁ、その部分で子供たちは関わっていたのか。何となく納得である。
「……それでも、ダメな物はダメ。外は危ないのよ」
「じゃあ、シーリンが付いてきてくれれば良いと思うわ」
「……は?」
唐突なマリナの言葉に目を点にしたシーリンに構わず、マリナは言葉を続けていく。瞳は若干、輝いているように見受けられた。そしてふと気付いたが、池田の存在が忘れられているような気がする。本人もこの状況であまり目立ちたくはないようなので、不幸中の幸いと言うべきなのだろうか。少し迷う。
「そうよ!シーリンがいれば問題ないわ。貴方と一緒に買いに行って、子供たちにも買ってきて。ほら、何の問題事もないわ」
「外に出ることが問題なの!…私がいたって危険は消えないから」
「そうかしら?昔から貴方がいるだけで随分と危険が減っていたと思うけれど…」
「それは二人の方が安全だから当然。…でなくて、その時と今とじゃ状況が違うでしょう」
「でも……」
「でもじゃないの。この話はここで終わり。二人とも立って、もう解散しても良いわ」
ピシャリと言い放った彼女の言葉に従って池田は直ぐさま立ち上がって去っていったが……マリナだけはそのまま、軽く俯いていた。
「マリナ?どうかした?」
「……シーリン」
ゆっくりと顔を上げた彼女は深刻そうな顔で、言った。
「足が痺れて動けないの。立たせてくれる?」
駅が近隣諸国にあるかどうかはさておいて。喫茶店があるかもさておいて。
平和なカタロンもいいですよね。