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ぴくりと、ケルディムが何かに反応したのを刹那は認めた。
それは恐らく彼自身でも気付けないほどに小さな反応。まぁ、今回は気付いたようだったが、それほどまでに些細な反応だった。
「…どうかしたのか?」
「ん?あ、何かな…戦闘の香り?みたいな?」
「見たいなって何それ」
セラヴィーが問うが、ケルディムはさぁと肩を竦めた。竦める以外の反応が浮かばなかったのだろう、きっと。実際に、彼も正確なところは把握し切れていないに違いないと、刹那は何となく確信していた。見ていれば何となく、そういうことが分かることだってあるのだ。
そして、四人の中で唯一何も言わなかったエクシアはしばらく考え込むような様子を見せてから、ゆっくりとした様子で口を開いた。
「しかし…何かがあったのは事実だろう」
「ケルディムだしねぇ。彼の気配察知能力は素晴らしい物があるから、僕らとしても疑ってみる気はないし。ただ、そうだね、ケルディムが小さくても反応できたんだとしたら、それはやっぱり僕らの同類関係なのかもね」
「同類?」
ということは、エクシアたちのような人形に、何か問題でも起こったと言うことだろうか。それを、ケルディムが少しだが察知したと、そういうことなのか。少なくともセラヴィーが言っているのはそう言うことだろう。
この場合、同類とは誰のことを指すのかが少し気になった。自分がまだ知らない誰かなのか、知っているデュナメス、キュリオス、ヴァーチェの中の誰かなのか。知り合ってしまったのだから気にならないわけがない。
しかし、それを訊くのもどうかと思われる。ケルディムの様子から、それが誰かまでは把握できていないのだというのは理解できたから、無駄だろうという気持ちが結構強く存在しているのだ。
異変が分かるのに詳細を知ることが出来ないとは…中々不便だと思っていると、同じように思ったらしいセラヴィーがため息を吐いた。
「こういうときにヴァーチェがいたら良いのにねぇ。『システム・ナドレ』を使えばあっという間に分かるんだと思うけどなぁ……何でここにヴァーチェがいないんだろ」
残念だよ。そう続けるセラヴィーに、今度はエクシアがじとりとした視線を送った。何を分かり切ったことを、という気持ちが入っているように見える。
「それはお前に突然会わせないためだ。決まっているだろう」
「えぇぇ?何でどうして?僕は何も悪いことしてないんだしさ」
「意図的にはぐれて散策するのは十分に悪いことだと思うが」
「いつものことなんだし、それも別に悪い事じゃないんじゃない?」
……いつもの事になっている方が問題なのではないだろうか。
刹那はそう思ったが敢えて口にしないことにした。マリナ同様、セラヴィーのような相手には何を言っても無駄だろうと判断したからである。
…というか。
「エクシア、『システム・ナドレ』とは何だ?」
「あ…あぁ、それか」
少し動揺しながら答えるエクシア。
どうして動揺しているのかが分からず刹那は一瞬頭にクエスチョンを浮かべたが、気にするほどのことでもないだろうと聞き返さないことにした。エクシアが、直ぐにいつも通りになったからである。
「それは、ヴァーチェの特殊能力だ。もしかしたらその内見せることになるかもしれない」
「ま、それもこのままずっと僕らと一緒に行動していたらの話で、それでも確率としてはかなり低い物があると思うけどね。ていうか見てもイマイチ理解できないと思うよ?僕も理解できてないし」
……どんな能力だ、それは。