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このお題と来たら、やはりこういう話になるでしょう。
何かハレとミハのいざこざが話のメインっぽいけどね…。
11.教科書
「あ」
通学鞄の中を見て、アレルヤは小さく声を上げた。
「……マズイ…教科書忘れた……」
「お前が?珍しいじゃねぇか」
「しかも全教科」
「はぁ!?全教科、だぁ!?」
「……どーしよ…」
あまりの事態に意識が遠くなったがすんでで堪え、驚いていた片割れの方を見る。完全にショックのせいで頭が働かなくなっていた。これでどうしようかを考えるのは……無理な気がする。となれば、助けを求めることが出来るのはハレルヤくらいの物。
ハレルヤはその視線を受けて、なら、と口を開いた。
「俺が見せてやるからどうにかしろ」
「あ……そっか、そうすれば良いんだ」
「気付け」
慌てすぎて簡単すぎることにも思考が至っていなかったことを恥ずかしく思い、アレルヤは少し俯いた。ハレルヤの呆れの籠もった視線を受け、頬が微かに熱くなった。これは……かなり恥ずかしい。
そのまま、あー、うー、と唸っていると、ふいに叫び声が耳を打った。
「やべぇ!教科書忘れた!」
ミハエルだった。
え、と思わず片割れと共に彼を凝視していると、ギ、ギ、ギ……と効果音が付きそうな様子でミハエルの顔が向けられる。視線が合う…ところでアレルヤは慌てて視線を逸らした。今の自分に彼に対して何かをしてやれるような余裕はないし、教科書を見せるにしてもそれが無いからどうしようもない。
だが、ハレルヤの方はそんな事もないのでそのままで、自分に向けた以上の呆れを持ってミハエルを見ていた。
「何やってんだよテメェ」
「だって…しゃーねーじゃん!昨日の夜はネーナと一緒にテレビの特番見てたんだからな!準備とかする余裕ねーし!」
「優先順位が違ぇだろーがッ!」
「何言ってんだ!」
ハレルヤ渾身のツッコミに、ミハエルは堂々と答えた。
「明日の準備よりネーナとの時間の方が優先順位は上に決まってんだろ!」
「決まるかボケェ!」
その言葉と共にハレルヤによって投げられた筆箱(鉄製・長方形)は見事にミハエルの額に直撃した。
ガツン、という音にアレルヤは身をすくませた。自分に当たってはいないが……今の音は痛い。音だけで既に痛い。鉄製だったし何より、当たった箇所が角っこだったのが視認されていたから尚更。見ていなかったらまだここまで痛い思いは無かったかもしれない。
しかし、それだけでは気分的に足りなかったらしく、ハレルヤはそのまま倒れていたミハエルの傍らにツカツカと歩み寄り、胸ぐらを掴んで前後にガクガクと揺すり始めた。
「テメェの頭は飾りか!?飾りなのか!?明日の準備より妹との時間が大切って、テメェどんだけシスコンだ、あぁ!?答えてみろ!」
「げふっ…や……ならテメェはどうなんだ!」
揺らされた衝撃で我に返ったのか、ハレルヤの手を振り払ってミハエルが叫ぶ。
「明日の準備とアレルヤとの時間!どっちを選ぶんだブラコン野郎!」
「アレルヤとの時間の後に準備するから問題ねーんだよ!」
「んなっ…卑怯だぞ!そんな選択肢無いってのに!」
「無いなら作るまでだ!」
「ちょ……二人とも…」
ヒートアップして止まりそうもない二人の口論(?)に、アレルヤはどうしようとオロオロと成り行きを見ていた。授業が始まるまであと一分弱。それまでにこの騒動が終わるだろうか……否、間違いなく終わらない。終わるどころかもっと酷いことになる可能性が可能性の方が高い。
一時間目の授業は誰のだっただろうとアレルヤは立て続けに変化する状況によてt混乱している頭で、必死に思い出そうとした。場合によっては教師によって収拾が付くはず……だったのだが。
「…一時間目って、数学……グラハム先生の……」
ダメだった。むしろこの教師だったら収拾ではなく事態の悪化が起こるだろう。
となると、グラハムが来るまでに事態を収めなければならない、と言う事になるのだが。
ちらり、とアレルヤは未だに言い合っているハレルヤとミハエルの方を見た。
「……無理だよね」
「ですわね」
席に座って優雅に紅茶を呑んでいた留美が頷く。
「これが止められる人には賞賛を送りますわ」
「…だね」
アレルヤに出来るのは、二人の様子を眺めている事だけだった。
実は最初からいました王留美。