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「っあーもう苛つくーっ!」
「…ブリング、あれは一体何があったんですか?」
「……まぁ色々と」
「色々、じゃ分かりませんよ」
ため息を吐いて、リヴァイヴは帰ってきてからずっと叫んでいるヒリングにチラリと視線をやった。いい加減に近所迷惑……いや、自分に迷惑だから叫ぶのを止めて欲しいのだが。騒々しくて読書さえ出来ない始末である。
二人が帰ってきたときから、嫌な予感はしていたのだ。ヒリングがブリングと一緒に帰ってきたことに対しては、まぁそういうこともあるだろうと放っておいた。だが、ヒリングの様子が何だかいつも以上に激しい様な気がしたのは、恐らく放っておいてはいけない箇所だったのだろう。
放っておかずに触れていたら、ちょっとは違う展開があったかもしれない。
…あるいは、状況が酷くなっていただけかもしれないが。
「ともかく、僕にも分かる程度に教えてください」
「……重要参考人らしい誰かを逃がした。目の前で」
「あぁ、なら怒るのも道理ですね」
端的なブリングの説明にリヴァイヴは頷いた。納得である。
何だかんだ言ってかなりプライドの高いヒリングだ、目の前でターゲットに逃げられれば苛立ちもするだろう。自分だってきっと同じような反応をするに違いないのだ、その気持ちはよく分かる。
しかし珍しい話だ。ヒリングは戦闘能力に特化しているし、場合によっては相手を殺すことはあれど、逃がすことなどないと思っていたのだが。そしてその評価は一つも変わらないのだが。
不調と言うこともあるだろうし、偶然だって、思いの外強い相手だった、という場合も考えられるが、やっぱりそれでも珍しいと思うし、驚く。
そんな思いを抱きながらヒリングを見ていると、その視線の中で彼女はガバリと立ち上がって叫んだ。
「覚えてなさいよオッドアイの誰かーッ!」
「オッドアイ?それが相手の特徴ですか?」
「あぁ。オッドアイの青年と子供、それと茶髪の少女だ」
「それはまた……」
良く分からない組み合わせだことで。
オッドアイの二人は関連があると見て良いが、そこに突然茶髪の少女が入るとワケが分からない。知り合いか何かだろうとは推測できるが。
でもオッドアイの誰かって、青年と子供のどちらのことだろうか。
首をかしげいている間にヒリングが勢いよくこちらを振り返った。
「リヴァイヴ!そう言うわけだからヤケ食いで食べたいから何かお菓子頂戴!」
「…は?ちょっと待ってください!ヒリング、貴方もしかして僕のお菓子を食べ尽くす気ですか!?自分が勝手に持ってきたあのお菓子たちはどこに!?」
「そんなのさっきからので全部食べたに決まってるじゃない!」
「さっきからの、で?」
その言葉にヒリングの周りを見渡してみると、散乱している菓子の袋、缶、紙袋、等々。叫びながらヤケ食いは行っていたらしい。
器用なことだと何となく感心しながら、ハッとリヴァイヴは我に返った。違う、感心している場合ではなかった。今は自分の菓子の危機なのだ。付け加えると、ブリングのも危ないかもしれないし、今はここにいないデヴァインの置いていった食べ物も。
「…っにかくダメです!食べるんなら自分でまた買ってきなさい!」
「嫌よ!何でまた外に出ないと行けないの面倒なっ!」
「だからって人のものを食べて良いわけないでしょうが!」
「良いのよ!だって私だもの!」
「そんな理屈通してたまるかーっ!」