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こんなお題だと、暗いのしか浮かびません……。
02.同罪
「あなたが殺したんだよね」
一面の紅。
「どうして私が死なないといけなかったんですか?」
その紅は、血の海。
「もっと生きたかったのに」
その海から生えている、何本もの、手。
その手は何かを捕らえようとしているみたいに、揺れて、蠢いて。
その手は何かに救いをもとめているかのように、伸ばされ、開かれ。
「何でお前はのうのうと」
助けを求める声は怨嗟に変わる。
ふいに、一つの人影が、現れた。
小さな子供、白い服を着ている小さな子供。
子供は、顔を上げて微笑んだ。
「この、同族殺しが」
ゆっくりと目を開いた彼に、なんだかホッとして安堵の息を漏らす。
彼はゆるゆると顔をこちらに向けた。
「せつ……な…?」
「起きたか、アレルヤ」
今、刹那とアレルヤはミッションのために、指定された待機場所にいた。
スメラギの予想だと、紛争が起こるのは明日の朝早くだということで、それまでは眠るなり何なりして、少しでも体調を整えておくことにして、二人は眠ることにしたのだが……刹那は、どうしてだか眠れなかった。目がさえてしまって、目をつぶっていても一向に眠気が襲ってこないのだ。
それでも体を休めないとと思い、ずっと横になっていた。
明日のミッションについて思いを巡らしていたとき、アレルヤの声が聞こえてきたのだ。
いや、それは声と呼べるかどうか怪しいもの、だったかもしれない。少なくともそれは、意味をなす言葉ではなかった。
彼は、うなされていた。
起き上がって近づいて、のぞいてみた彼の顔は苦悶に歪んでいて、良い夢を見ているわけではないということが、うめき声以上によく分かった。
どうしようか、と考えたのはほんの少しの時間。
すぐに起こすことに決めて、刹那はアレルヤの名前を呼びながら体を揺さぶった。
そして、現在に至る。
起き上がろうとする彼を押しとどめ、手を握りながら刹那は口を開いた。
「大丈夫なのか?」
「……うん。少し、夢見が悪かっただけだよ」
そんなわけがない。
もし、そうだというなら、この震えている手は何だ?
決して、少しであるものか。
「アレルヤ」
「…何?刹那……」
返ってくる声も弱々しい。
…相当、ダメージを受けているようだ。
「辛いことがあるのなら、言えばいい」
「そういうわけには、いかないよ……」
「人を殺すことに」
言うと、アレルヤの体が固まった。
それにかまわず、刹那は言葉を続ける。
「人を殺すことに罪悪を感じているのなら、それは一人で抱え込む必要はない。俺も……いや、俺たちも、その業は共に背負うべきものだから」
彼の反応で確信が持てたが、やはり彼は人を殺すことについてまだ、後悔を続けているのだ。
何か、それ以外の要因もあるような気はしたが、刹那には残念ながらそれを知り得る方法がない。知ったところでそれについて、感情を共有できるわけではないだろうから、知る必要もないとも考えている。
ただ……心当たりなら、無くはなかった。
だからといって、それが要因だったとしても、刹那には入り込む余地はない。それこそ彼自身の問題で、刹那が踏み行っていい領域の話ではないのだから。とても……歯がゆい話なのだが。
「………だから、お前一人で苦しむことはない」
「…ありがとう。刹那は優しいね」
「優しいのはお前だろう、アレルヤ」
「…違うよ、僕は優しくなんか無い」
悲しげに微笑むことができるのは優しいからに他ならないと、彼はどうして気づかないのだろうか。気づかない、あるいは気づけないのか。
「眠るといい。今度はずっと、俺が手を握っている」
手をつなぐのは、互いの心細さから少しでも遠のくためだ。一人ではないと、相手の体温がそれを伝えてくれる。
「……ありがとう」
もう一度繰り返して、アレルヤは目を閉じた。
しばらくして穏やかな寝息が聞こえてきても、刹那は手を、離そうとはしなかった。
刹那が男前。
彼って、マイスターの中でもかなりの男前な子ですよね。