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やっべぇ……こじつけだ、コレ……




03.苦しい顔



 ……息苦しい。
 どうしたというのだろう。今は何もない、真夜中のはず。何が起こるか分からない戦闘中ならいざしらず、どうして平時のこのときに。
 何が起こっているのか把握するため、深く沈めていた意識を上に向かわせた。
 少しずつ、少しずつ意識を上げて。その度々に苦しさが増していくのは、間違いなく、気のせいなどではない。
 一体、何が起こっている!?
 嫌な予感に背を押されて、意識を一気に水面上に上げきった。
 そして見たのは。
『なっ……アレルヤ!?』
 床に倒れ込んで苦悶の表情を浮かべている、半身。
 額に脂汗を浮かべて苦しげに呻いている彼を見れば、ただごとではないと分かる。
『おいっ……しっかりしろっ!』
「っあ……うぁ……」
『アレルヤ!…………くそっ』
 必死で呼びかけるが、反応は返ってこない。
 こういうときほど、自分だけの体がないことを不便に思う。あったとしたら、いくらでも彼の体を揺り動かして、意識をハッキリとさせることができる。そうしなかったとしても誰かに助けを求めにいける。いや、後者の方は滅多なことでもないと実行はしないだろうけど。
 誰かが気づくのを、待つことができればいいのかもしれない。だが、ここには今、アレルヤしかいない。ここはトレミーなどではなくて、次のミッションのための待機場所だった。そして、酷くタイミングの悪いことに、そのミッションは彼一人だけで行われるものだったのだ。
 そんな状態でハレルヤにできることはただ一つ。
 強制的に、入れ替わること。
 …表に出ているよりは、痛みを和らげることができるはずだ。それに自分が出れば、なんとかできるかもしれない。
「っ……う…」
『アレルヤっ、替わるぞ!?』
 叫んで、それから無理矢理アレルヤの意識を沈めた。

『ん……ハレルヤ?』
「やっと起きたか」
 なんとか落ち着くことができてから少しして、アレルヤが目覚めた。
 彼はいつの間にか体の支配権が、ハレルヤに渡っていたことに驚いたらしい。
『えっと、何があったのかな』
「お前、呼吸困難になって倒れてたんだけど」
『…え?』
 言うと、アレルヤは呆けた表情を浮かべた。
『……僕が?』
「そ。過呼吸みたいだったけどな。なんか無かったか?」
『ちょっと待って……』
 アレルヤは腕を組んで考え込み始めた。
 この様子からして、どうやら本当に気づいていなかったらしい。あれほどの症状が現れてなお、こういう態度をとれるのだから、違うということはないだろう。ということは、あの時意識は無かったのか。
『たしか、この部屋に来て……それで色々考えていて……そうしていたら、突然目の前が暗くなって……それで、気づいたら今みたいな状態になっていたんだ』
「マジで気絶してたのかよ。で、何を考えてたんだ?」
『……色々と』
「お前なぁ…」
 曖昧な返答に、ハレルヤはため息を吐いた。
「まさか、俺に隠し事をできるとでも思ってんのか?」
『うっ……それは、思ってないけどさ…』
「じゃあ、とっとと言え」
『……………あの、施設のこと』
 ぽつりと呟かれた言葉に、呆れにも似た感情を抱く。
 あのミッションは、やらなければいけないものだった。今やらなくても、いずれかは。それは自分たちのけじめをつける為でもあった。それから、敵を減らして生きる確率を上げるためにでも。
 その決意に巻き込まれて死んでしまった子供たちのことを思い、彼はああなってしまったのだろうか。そういうことも、あり得ないとはいいきれないだろうし。
 ……バカバカしい。
 正直、そう思った。
 ハレルヤにとって、アレルヤと共に生き残ることが何よりも大切なことだ。それ以外は、ハッキリ言うとどうでもいい。半身が大切にしている仲間たちでさえも。
 だからといって、彼の気持ちが分からないわけではない。アレルヤは、数少ない同類をその手にかけたのだ。ただでさえ戦争に向かない性格なのだから、多少なりとも傷ついてしまうのも当たり前だろう。
 思って、ハレルヤは頭をかきむしった。
「あーっ!ちくしょッ!」
『え、ハレルヤ!?』
「何で俺の体はないんだよっ!」
『えと……どうしたの?』
「無いとな、お前に抱きつけないだろうがっ!」
 一瞬だけ、沈黙が流れた。
 その後、おずおずとアレルヤが話しかけてきた。
『ハレルヤ、それって……』
「お前、絶対にそういうことしたら落ち着くだろ」
『……かもしれない』
「つまり、つーことだ」
 別に、現状に不満を持っているわけではない。それどころか感謝さえしている。これならば、どんなときでも半身を守ることができる。他人と違って、遠く離れることなどない。いつも傍にいることができる。
 だけれど。それではできないことが多いのもまた、事実なのだ。
 こうできたらいい、ああできたらいい。思うことはたくさんある。だが、体がなければ実行できないことが多い。
 だから、たまにだけれど、体が欲しいと思うのだ。
「ま、何かあったら俺に言うんだな」
『……うん。分かったよ、ハレルヤ……ありがとう』
「当たり前だろーが」
 笑って、体の支配権を渡す。
『んじゃ、そろそろ寝ろ。明日のミッションでヘマなんてするなよ?』
「分かってるよ。おやすみ」
『あぁ』
 そしてこの後、夜は何事もなくふけていった。


ハレルヤにとって、あの状態は便利でもあり、不便でもある気がする……。
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