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今日は~刹那の~誕生日~っ!
おめでと、刹那!
「刹那」
背後から、自分を呼び止める声が聞こえてきた。
足を止めてくるりと振り返ると、そこには片眼を長い前髪で隠した、マイスターの一人が立っていた。
彼は手に、何か……中くらいとしか言い様のない大きさの箱を持っていた。ちなみのそれは、キレイにラッピング済みである。
「どうかしたのか、アレルヤ」
名前を呼ぶと、彼は微笑んで箱を差し出した。
「これ、刹那に」
「……俺に?」
受け取ったが、事情が飲み込めなかった。
一体どうして、アレルヤが刹那に物をくれるのだろう。地上からのお土産、というのはたまにもらうけれど…あいにく、彼は最近地上に降りていない。ずっと宇宙でのミッション続きなはずだ。それに、何かをもらうという約束も無い。
全く分からない。思い当たる節もないし。
「…今日は何かあったか?」
「刹那も忘れてるんだね……四月七日だよ、今日」
「四月七日……?」
何があったかと考え込むと、アレルヤは呆れの表情を浮かべた。
その様子から、今日のことを自分が知らないのではなようだと推測できる。
しかし、残念なことに浮かんでくる行事も、予定もない。
「あのね、今日は刹那の誕生日だよ」
「俺の……?」
「そうだよ。前、教えてくれたじゃないか」
ため息混じりの彼の言葉で、ようやく思い出す。
そうだ。今日は、自分という存在がこの世界に生を受けた日だった。
完全に……忘れていた。ただ歳を一つとるだけの日だと認識していたから。『どうでもいい』とでも思っていたのだろう。それで、この状況。
「刹那『も』、というのは?」
「あ、それ?僕も忘れてたんだ、誕生日。それから……ロックオンも忘れていたかな。みんなミッションで忙しいからね……でも、日付を聞いても思い出せなかったのは刹那が初めてだよ」
「……そうか」
受け取った箱をギュッと抱いて呟く。
「まさか、俺が存在するということを祝われるとはな」
「え?」
本心から出た言葉に、アレルヤが首をかしげる。
別に、この先は言わなくても良かったのだろう。けれども何となく、誰かに聞いて欲しい気分だった。
「俺は、人を殺してきた。そして、戦うしかできない存在だ。そんな人間なのに、生まれてきたことを祝ってもらえるということが……とても不思議なんだ。忌み、嫌われても、おかしくはないこの俺が…」
「……それは、僕だって同じだよ」
ぽん、と温かな手が頭に乗せられる。
思わず見上げると、彼の微笑みが悲しげに揺れているのが見えた。
「僕も、人を殺してる。戦うしかできないのも同じ。だけど、祝ってもらえたよ?」
「アレルヤ……」
「でね、祝ってもらえたとき、とても嬉しかった。ここにいていいんだって、とても実感が湧いたんだ」
だから、刹那にも。
言って、今度は明るく笑う彼。
その笑顔が少しまぶしくて、ちょっとだけ目を細めた。
どうして、アレルヤはこんなにも暖かいのだろう。こんな所に……戦いの場所に不釣り合いなくらい、優しいのだろうか。
その、どうして、という疑問を呑みこんで、刹那は表情を和らげた。
「……ありがとう」
「こちらこそ。刹那、生まれてきてくれて、ありがとう」
最後の言葉を言ってもらいたかったわけです。