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ツタ…って何があっただろうと考えて、そういえばラフレシアがいたなぁと…。
そんな感じのお話。
29:ツタ
「…そういえば、ラフレシアはどうなってるんだろ」
「ラフレシア?…あぁ、あれね」
「うん、あれ」
パン屋で、F91とビギナ・ギナはかつて送られてきた造花のような、ちょっと危険な贈り物のことを思い出していた。
あれは、確か人があまり来ない場所に放置しているはずである。というのも、何故だかヒトは選ばれるようだが、ラフレシアがヒトを襲う……とも違うが、ともかく、ターゲットにして何らかの行動を起こすことがあるからだった。ヒトがいるところに置くのは危険なんじゃないだろうかという事で、そういう形に収まった。
送り返せと言う案も出たらしいが、折角の贈り物を送り返すのは失礼に当たる。それにぶっちゃけてしまうと、この世界で切迫した危機が訪れることは無いだろう、という事実に関しても思うところはあったのである。
そんなラフレシアだったが、MSやMAが次々と人間になっていく今この時に、どんな状況になっているのかは気になる。普通のラフレシアになっていることは、苦情がないことから無いと判断できるけれど。
「朝顔になってたりしたら笑えるんだけど……」
「それが一番平和的な変化かも知れないわね」
「もう襲われたくないしなー…それがこっちにとっても一番かも」
襲う、といってもそれ程大した事をされるわけではない。単にツタに巻き付かれて持ち上げられて落とされるだけである。
けれど、それだけの事であっても割と痛い。
経験者は語る、である。
だが、経験者は語るだけではない。それを経験したからこその、ラフレシアへ近付くことに対する警戒心がしっかりと根付いているのだ。
「どうしよ、見に行った方が良いのかな?」
「えぇ、多分。私、もうバイトも終わる時間だから一緒に行きましょ?」
「本当!?」
「こんなことで嘘は言わないわ」
ニコリと微笑むビギナ・ギナ。
その姿に、F91は思わず涙しそうになった。ただ付いてきてくれるだけの事なのだが、その思いやりが嬉しい。一人より二人の方が心強いのは当たり前の事実である。
ちょっと待っていて、と言われて大人しく待つこと本当に少し。
やってきたビギナ・ギナと一緒にF91は店を出て、隣り合って歩きながらそういえば、と口を開いた。
「バイトの終わる時間って、いつもはもっと遅くなかったっけ」
「色々と変なことが起こってるからって、もう少しの間様子見らしいわ。それが終わるまでは早めに仕事は切り上げの方向だそうよ」
「ふぅん…人間になってもそんなに変わる事って無いんだけど…」
そこまで警戒しなければならない物なのだろうか。
分からない、と首を傾げていると、私も同感よ、とビギナ・ギナも頷いた。
「けど、詳細が分からないのも事実だしね…」
「ガンダムさんたちは何か掴んでたっぽかったけど、確定って程でもなかったらしいし」
そう言いながら思い出すのは昨日の話。とある『本』のことを知らないかとアレックスが尋ねてきた時のことだった。全く心当たりが無かったので首は横に振っておいたが。そういえば、そのまま彼女は別の所に行ったのだろうか。結構疲れている様子だったのに。
どうなのだろうと不安になりながら、アレックスにはガンダムがいるから大丈夫だろうと、とりあえず結論づける。あの兄がいたら、普通の場合は問題なく対応してくれるに違いなかった。自分の心配なんてきっと必要ない。
「ま、そっちはそっちでどうにかするんじゃないかな。オレらにやることが出来たら、きっとやっぱりガンダムさんたちから話が来ると思うし」
「それまでは待機、ということ?」
「そういうことじゃないかな」
何も分かっていないままに勝手にうろちょろするのは迷惑になるだろうから、それまでは大人しくしておくべきだろう、きっと。
そんなことを話しながら建物の曲がり角を曲がったところで……突然、浮遊感を感じた。
「うわ!?」
「F91!?大丈夫なの!?」
宙ぶらりんの状態になったと気付いてからだったが、F91は微妙な笑みを浮かべた。大丈夫と言えば大丈夫……だと思うが、笑みの通りに微妙な気持ちだった。
今、足にはツタが巻き付いている。これは近くまで来ていたラフレシアのツタで、つまりは自分は攻撃対象にされてしまったらしい。
この後は、いつものパターンが待っているのだろう。もう少しくらい持ち上げられて、謀ったように頭から落とされるのである。……何でこんなパターンが身についてしまったのだろうかと、少し思うところはあるにはあるのだが。
はぁ、と溜息を吐いたところで、足に巻き付いていたツタの気配が消えた。
そして落とされるんですよね…。
頑張れF91 …。