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そして殴り込み決行。

弟妹同盟は相応しい相手を探しているんです…。でも、彼らのお眼鏡にかなう人って存在しないと思うに一票なんですが。



 荒々しくはないが丁寧でもない音を立てて開くドアを、ザンザスは頬杖を付きながら見ていた。誰かが来るのは気配を察知して気付いていたし、誰が来るかもあらかじめ知っていた知識から推測が付く。気配など読むまでもない。
「ザンザス、話したいことがあるんだけど」
「……大切な、話なの」
 そう言って閉められるドアと、室内に入っていた雲と霧の守護者を見やり、これは本部からの話ではないと見当づける。十中八九個人的なことだろう。どうせこの二人は今回、使者としてではなくただの滞在者としてこちらに来ているのだ、そのような物は殆ど有り得ないとは分かっていたのだが。
 何だと促すこともなく黙っていると、雲雀が口を開いた。
「僕らは絶対に貴方なんて認めないからね」
「……何でテメェらにんな事言われねぇとなんねぇんだ」
 呆れながらも、とりあえず何を認めないのかは理解した。どうせこの二人が纏めて、しかも自分を尋ねるとしたら用件は一つや二つ。そして今の発言で絞ることが出来た。
 ただ、それをハッキリと理解すると苛立ちが湧き出てくる。わざわざこの二人に許可など取る気もないし、取る必要もないというのに。毎度毎度良くも……まぁ、今回のこの単刀直入さはいっそ清々しい。その点だけは評価しよう。
 ただでさえ終わらない書類整理で低かった機嫌がさらに下がるのを感じながら、隠し持っている愛用の銃に触れた。いざとなったら本気で殺す。
 そんなこちらの心情を知ってか知らずか、喩え知っていても変わることは無いだろうが、雲雀は相変わらずの表情で言葉を続けた。
「とにかく貴方だけは絶対にダメ。直ぐに暴力振るうし怒りっぽいし、横暴でワガママで頭ごなしに押さえつけるし。仕事はキッチリというその態度は評価できるし、強いのは認めるけど何か嫌」
「だからといって……雨の人はたまに怖いから…それに、黒いのか白いのか分からないし……黒かったらやだな」
「それに跳ね馬さんも問題だね。何か軽い。あと直ぐくっつきたがるのがうざったいし、部下がいないと何も出来ないなんて……論外。迷惑かけるしか出来ないじゃない。こんなのが同級生だったなんてスクアーロも大変だね」
 クロームも加わり周りの男のダメ出しが始まる。
 聞きながら、そこそこ公平に見ているのだとは分かる。が、どこか個人の意見も入っているような。特にディーノの所。
 ここまでポンポンとダメ出しが出ると逆に文句も言えない。実際に事実だし、他のヤツらのダメ出しは聞いていて悪くない。
「……じゃあ訊くが」
 自分だけでなく他のもダメ出しを続ける二人に、尋ねてみることにする。
「どんな相手なら良いんだ」
 本来ならこんな質問はしない。だが、ここまでダメ出しを重ねていく二人を見ると、純粋に興味すら湧いてくるから不思議な話である。
「僕らが認めることが出来る人っていうのが最終ラインだね」
「危ない人には預けられないし……」
 クロームが怖ず怖ずとした様子で言うが、危ない人と言った時点で殆どのマフィアは対象外になるのではないだろうか。そうなると、どうしても色々と無理な気がするのだが。何せ相手はスクアーロだ。
 いっそお前らが候補に挙がれと思ったが、それは彼らの選択肢に無いのだろう。この二人はあくまで『兄』のような物としてあの鮫を見ているのである。そうでなければ今頃、この二人も自分の抹殺リストに載っていたに違いないのだ。載せていても未だに始末できないのも何人かいるが。特に先ほど挙げられた雨の守護者や、どこぞの同盟ファミリーのボスがそうだ。
 したがって、この異議申し立ては『兄』を取られることに対する八つ当たりのような物。
 そう考えると苛立ちが増した。どうして自分が八つ当たりなんて受けねばならないのか。
 この場合に至っては自分がキレてしまおうと、確実にこちらに非はないだろう。というか普段の行いがどうのこうのと、雲雀とクロームだけには言われたくない。自分よりも自由人だろう、この二人は。こっちは仕事はこなしているというのに。
「…どうやら交渉は決裂したようだね」
「交渉?今のやり取りのどこに交渉があった」
 殺気を纏い始めた自分を見て息を吐く雲雀を睨み付ける。ため息を吐きたいのはこちらなのだが、これは彼らには関係ないことだろう。
 ゆらりと椅子から立ち上がり、両手に武器を取って獰猛に笑みを浮かべる。
 考えるのも話を聞くのも止めだ。生意気な口を聞いた彼らには、もう二度とそのようなことが出来ないように後悔を植え付ける。もう決めた。
「テメェら……覚悟は良いか?」
「戦うの?うん、それは楽しそうだね」
 心の底から楽しそうに笑みを浮かべて、雲雀が取り出したトンファーを構える。隣では、クロームも武器を構えた。どこに持っていた、という言葉は不要だろう。この二人はボンゴレの守護者なのだ。
「じゃあ、勝った方が正しいってことで、どう?」
「……上等だ。テメェら…纏めてかっ消す」
「…させない」
 互いに戦闘体勢に入り。
 そして、ザンザスの銃が火を噴いた。





部屋が大惨事だぜ…。
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