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本当に、いる。
ハロの探知能力によって示された場所へと裂け目を作って飛んできてみれば、いたのはリジェネやロックオン、ヨハンやネーナといった知り合いたち。
それに、壊れたアリオスと…キュリオスの体の、中身は彼女である存在。
ヴェーダ。
彼女が、そこにいた。
「……久しいわね。今はハレルヤ、だったかしら?」
「ヴェーダ……」
「本当に懐かしい事。何千年ぶり?」
他の事……アレルヤの姿すら目に入らず、ハレルヤはヴェーダを見ていた。目が離せない、というのが正しいだろうか。何か思うところがあろうと、何年経とうと、やはり自分の中では彼女は彼女だった。たった一人、アレルヤ以外に本当の意味で信頼する事が出来た、とても希有な存在。
彼女は穏やかな笑みを浮かべたままこちらに寄って来て。
グイとハレルヤの服を引っ張って屈ませたかと思うと、右拳を繰り出してきた。
あまりに突然の事で、反応の一つも出来なかったハレルヤはそれをもろにくらってしまった。痛い、なんて物ではない。人形というのは全てが戦闘用に作られていて、彼女が今顕現を果たしているのはその人形の一人……なのである。その拳といえば、強力な物であるに違いないのだった。
にしても拳……とは。
痛む左頬をさすり、思う。
……普通、ここは平手ではないだろうか。
「ねぇ、ハレルヤ、私が殴った理由は分かるわね?」
「……勝手に魂を鏡に映して縛り付けたのは…悪かったとは思ってるけどよ」
「当然よ。もしも分かってなかったら二発目が行くところね」
物騒な言葉まで笑顔のまま、ヴェーダは言ってのびをした。
と、ここでハレルヤはようやく周りの様子を目にする余裕を得た。今まではヴェーダに会う、という事にばかり意識が行っていたので気にしている暇がなかったのである。
そうして、アレルヤやハロやHAROを除くメンバーが唖然としているのを目にした。それは驚くだろうと思うが、リジェネはどこか笑みを含んだ驚きなのが苛つく。どうせ『殴られるなんてざまぁみろ』などと思っているのだろう……後で彼には二発くらいはくらわすべきだろうか。
「さて……貴方たちが来たなら、私がいる理由はないわね。戻るわ」
「は?戻るって……」
「だいたいね、魂を鏡に括り付けるなんて荒行事なの。魂は傷つくし、その後は劣化していっても不思議ではないでしょう?」
…つまり、保存状態は激悪ということか。
申し訳なく一瞬だけ思い、その間に変わったらしい、人形の表情がヴェーダからキュリオスの方に変わった。
「あの……」
「話は後で聞くよ、キュリオス。それよりも今はリジェネの方」
「…うん」
何かを言いたそうなキュリオスの様子だったが、アレルヤの一言に素直に頷いた。優先順位は分かっているらしい。ヴェーダがいなくなった今、掛かっていた不動の魔法は解けるしかないのである。
「……逃げる事は、許してもらえそうにないね」
「当然だろ」
ここで逃がしたら余計に面倒な事になる。
気持ちを切り替えて、ハレルヤは静かにリジェネを見据えた。