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ついに橙のお題終了…っ!特殊な使い方をしたお題以外で、一番乗りで終わったのはハレアレでした!
おめでとうっ、と言うべきなのか…!?
幼少時代の話です。脱走して後のあたりかと。
20.ラララ
あんな場所に入ったのが運の尽きだったのだろうかと、ハレルヤは軽く息を吐いた。
『オイ、アレルヤ』
「Ra、Ra…ハレルヤ?どうかしたの?」
きょと、と歌うのを止めたアレルヤは、そのまま立ち止まって自分に話しかけてきた。
チッと舌打ちをしたい気分になる。この、人通りの多い場所でその行動は悪目立ちしかしない。施設にいたときは施設自体が特殊な物だったから、当たり前のように現象そのものに関してはスルーされたが今、この場ではそうはいかないということを片割れは理解しているのだろうか。
していないと断定できると判断して、ハレルヤは強制的にアレルヤの意識を内に引きずり込んで、自分がすっと表に出た。
『…ハレルヤ?』
「気にすんな。単なる気まぐれだ」
『……そうなの?』
「あぁ」
どうせ言ったところで分かりはしないだろうと結論づけて、ハレルヤはそう言ってこの事柄に関する会話を強制終了させた。
「それよりもお前…それ歌うのいい加減に止めろ」
『それ……って聖歌のこと?』
「聖歌って呼べるほど上等なもんじゃねぇけどな」
先ほど、アレルヤは教会を見つけた。それで思わずだろうがドアを開けてしまい、その瞬間に静かで祈り捧げるような歌声が聞こえてきたのである。
その、突然のことであると同時に大きな存在感を持った歌声に一瞬、ハレルヤは気圧された。気圧され、直ぐに我に返ってバカバカしく思った。神に捧げるという歌だが、果たして彼らは本当に神がいると信じて歌っているのだろうか。もしもそうなら救いようがないほど世間知らずだと思ったのだ。
神がいるなら、どうして自分は生まれ、あの施設は存在しているのか。
神がいるなら、自分たちのことを救ってみせれば良かったというのに。
……だが、アレルヤは当然のように、そうは思わなかったらしい。
しばらく開いたドアの傍に立っていた彼は、何の前触れもなくふっと顔を上げ、ドアを閉めて教会を後にした。
そして、それから。
アレルヤはずっと、少し聞いただけの聖歌を、歌詞も知らず、メロディーもうろ覚えの状態で歌い続けている。
ただただ、メロディーに沿って、歌詞があったような気がする場所でラ、ラ、ラ、と発音するだけの、歌と呼ぶには稚拙すぎる行為。それを、アレルヤはずっと行っていたのである。
一人だけならそれはそれで問題なかったかもしれないが……生憎と、ここには自分もいるのである。片割れが歌い続けるならば、否応なしに自分も歌を聴き続けることになる。稚拙ではあるが、神を称えるその歌を。
正直、まいる。
「アレルヤ、お前は神なんて信じてんのか?」
『いたら良いな、とは思ってるよ』
「けど確信はねぇんだろ?」
『……まぁ、それは、そうなのかもだけど…』
「なら、んないるかも知らねぇ相手の事を称えるようなマネをす…」
『称えてなんか無いよ』
ふいに、ハレルヤの言葉を遮るようにポツリとアレルヤが言った。
は?と呟き、驚きのあまり足を止めそうになったがどうにか堪えて歩を進める。変な目で見られないために変わったというのに、これで止まったら自分もアレルヤと変わらないではないか。それでは意味がない。
そんなことを思っている自分に構うことなく、アレルヤは言葉を続ける。
『あの歌はとても綺麗だったよ?だから、僕はそれだけを理由に歌ってるの』
「…歌が綺麗?どこがだよ」
『どこって言われても……説明に困るけどさ、とにかく綺麗だったもの』
「……ワケ分からねぇ」
あれが綺麗などと。ただ単に相手を気押すような圧倒的存在感を持っていた歌声に歌われていただけの、静かな歌ではないか。
それがどうして『綺麗』になるのか分からない。
分からないが……何となく、納得は出来る気がする。
だから。
「…そーいうことなら、もう少しくらい歌ってもいいぜ」
『本当!?』
「ただし『中』で、だ。上に出てくんなよ」
それが条件だと言い終わる前に、アレルヤは楽しそうに歌い始めた。
再び聞こえ出すラ、ラ、ラ、ラ、という旋律に呆れつつ、ハレルヤはただ足を進めた。
偉大なる主よ、哀れな子供に慈悲を。
(慈悲?そんな物を誰がくれるというの?)
(そんな物が無くても生きていける)
(二人でいれば、生きていけるのだ)