お題：赤 03．世界を変える方法

ヨハン兄の話も書きたいんだけどなぁ……なかなか、浮かびません。
つーわけで、これにはヨハン兄は出てこないという。

---

03．世界を変える方法



　紛争根絶だとか。
　世界を変えるためだとか。
　そういうことをするために戦っているのと、兄からは聞いているけれど……それに関しての実感はあまり無いの。

　ただ、動かして。
　ただ、戦って。
　ただ、撃って。
　ただ、切って。
　ただ、壊して。
　ただ、崩して。

　ただ、ただ、ただ。

　ただ……それだけだから。

　実感が無いのはもしかしたら、あまりにも世界が大きすぎて、あまりにも変わってくれないからかもしれない。すぐにでも変化があったら、こんな気持ちにはならなかったかも。
　もっとも今の世界も自分にとっては、暖かで、色づいていて、穏やかで。変える必要は無いくらいに平和なのに、どうしてまだ行動を続けるのかな。ハッキリ言うと理由が分からない。強いて理由を言うなら、兄たちがやるからやる、という所？
　それでもやっぱり変えるために動いているのだから、何らかの形で変わっているのだというのを、この目で見たいと思うときがある。
　形になるのはずっと、ずっと先だということくらい分かっているけれど。だけど、どういう理屈みたいなのと、感情とは別物。
　それでも当然ながら、これはそうそう簡単に通る欲求ではなくて。思っていても見ることも、感じることもできない、そんな欲求。
　手っ取り早く、世界を変えることはできないの？
　そう、何度思ったかな。
　一番上の兄に訊けば、そんなに上手くいくことじゃないと優しく諭され。真ん中の兄に訊けば、知らないと即答されて。紫の丸い仲間に訊けば、できるわけないと繰り返されて。そうしてようやく、それが難しいことだと分かった。
　だけど、最近になって気づいた。簡単に、世界のほんの一欠片、つまり『私の』世界を、変えてしまう方法に。
　世界を変えたくなったら、彼に会えばいい。直接会えなくても、通信で声を聞くだけでいいの。それだけで、世界は変わるから。
　この方法は、二人の兄と丸い仲間にしてもらうのは無理。彼らと触れ合うことに慣れすぎているから、今更何をしてもそんなに影響があるわけではないの。
　だから、彼に。
　優しい優しい、彼。彼と会うと、彼の声を聞くと、彼の存在を確認できると。それだけで世界が柔らかくなる。
　実はこれは、とても不思議な話。なぜなら、他の人では同じことは起きないから。
　これは、彼の雰囲気のせい？
　それとも、私の気持ちのせい？
　どちらにしろ、私から見た世界がとても変わってしまうのは事実だもの。そして、私にはその事実さえあればいい。
　今日も、私は彼に会う。会えなくても、声を聞く。
　変わった世界を、見るために。

---

世界全体を変えるのは大変かもしれないけど、自分だけの世界だったらちょっとしたことで変わると思う。