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存在を忘れてしまっていた椿のお題 06。
…ごめんね、忘れるつもりはなかったんだ…。
カタロンの所に行ったときの話ですね、これは。何だか子供とマイスターを一緒にしてみたいようです。
06.消えないで
何だかんだで機の中に居座ってしまった子供たちを眺めつつ、ティエリアは小さく息を吐いた。全く、こういう時にはどんな反応をするべきなのだろうか。あまり子供と接したことがないから分からない。
それはアレルヤも似たような物だったらしく、しかし彼の場合は人当たりが良いため、自分から見ると割と良い感じで子供たちと触れ合っていた。
ティエリアには出来そうにない事だ。
「本当に良くやれるな…」
「ティエリア…何か言った?」
「いや、何でもない」
膝の上に子供を一人乗せ、隣に子供が座っている状態で首を傾げたアレルヤに、何でもないとティエリアは首を振った。実際に何でもなかったし、この感想を言ったところでどうなるワケでもないだろう。感想を言ったら直ぐに子供が寄ってくるとかそんな事態は、正直微妙なので嫌だ。
だから腕を組み足を組み、少し仮眠でも取っておこうかと思ったのだが。
ふと気配を感じて視線を下に向けると、何か別の子供がいた。
「……」
「……」
思わず無言で見つめ合う。
あまりに突然のこと過ぎて反応できなかった。それは相手も同じようで、どうやら自分がそちらを向くとは思っていなかったから戸惑っている、らしい。
どちらからも解くのが難しい膠着状態を、簡単に解いたのはアレルヤだった。
「二人とも、何か喋ってみたら?」
「え…あ………そうだな」
一理あるかとアレルヤの言葉に頷いたが、生憎と喋るべき内容が浮かばないのが悲しいところだ。だから、子供を相手にするのは経験がないから苦手だというのに。
が、相手の子供はそういうワケでもないようで、膠着状態が説けるな否や、直ぐに笑みを浮かべて口を開いた…羨ましいことに。
「お兄さんってガンダムに乗るんだよね」
「…まぁな」
それは隠すまでも無い事なので肯定を返す。子供たちだろうと、ガンダムがここに来て、自分たちがここにいたら否が応でも分かるだろう。ティエリアたちがガンダム関係者であることを。あとはメンバーを見たり服装を見たりすれば一発で分かる。
「ガンダムって凄いんでしょう?みんな凄い凄いって言ってるよ」
「あぁ、それは当然だな」
「当然なんだ!やっぱり凄いんだね!」
とても嬉しそうに楽しそうに話す子供につられ、ティエリアも薄く笑った。
子供というのは、何と無邪気な物なのだろう。戦闘の、人殺しの兵器をただ『凄い』という言葉だけで形容できるとは。その裏も表もない言葉は貴重だ。大人もガンダムの性能を知れば『凄い』と言うだろうが、そこにはそれ以外の別の感情も入ることが多々ある。畏怖であったり、恐怖であったり、本当に色々な感情が。
それを裏も表もなくただ『凄い』とだけ思うという事実が、どれ程素晴らしい事か。
出来れば、そういう事を思える存在の犠牲が少なくあれば良い。
世界を作り直す資格があるのは何も、大人だけというわけではない。むしろ子供たちの方が資格を持っているくらいだろう。
そう思い、ついついまた笑った。まさか、自分がこんな事を考えるようになるとは。随分と、性格が丸くなってしまった気がする。
「じゃあさぁ」
と、次はアレルヤの膝の上に座っている子供が問いを発した。
どこか、不安そうに。
「ガンダムが凄いんなら、それに乗ってるお兄ちゃんたちは安全なんだよね?」
「…え?」
「死んだりしないよね?」
どうなの?と見上げる視線にアレルヤは少し悩んだようだが、困ったように笑って子供の頭を優しく撫でた。
「うん、きっと大丈夫だよ」
「……本当?」
「本当だよ」
本当に……『きっと』大丈夫。
その答えが無難だろうと、ティエリアは静かに目を閉じた。断定は出来ないが、否定をしては子供たちを怖がらせてしまう。そして不安がらせてしまうのは、アレルヤの本意ではないだろう。ならばこの答えが一番妥当だ。
それでも、そんな思いを子供は肌で感じるのかもしれない。
未だに不安の色を消さない子供たちを見て、思う。
「…大丈夫なの?」
「あぁ、恐らくな」
何かが消える事を恐れるのは子供とて同じ、ということなのだろう。
子供って、色々なことに敏感だと思うのです。