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 リボンズは、持っている書類を眺めてある、とても重大な考え事をしていた。
 それは、自分がこの都を統べている存在である以上、決してないがしろには出来ない問題……いや、事態についての思考。

「…異端の都内への移住はまぁ…依然と変わらずあるようだけど良しとしようか……力を使えない彼らは殆ど普通の人間と同じだ」

 この『都』と言う名の箱庭を壊すような存在にならない限りは、別にいてもらっても構わないのだ。むしろいてくれた方が人口が増え、都の発展に一役も二役も買ってもらえる、というものである。

 それでも表だっては『異端の立ち入り禁止』をうたっているのは、そうすることで異端の能力を察知する機器を取り付けることが出来るから、である。何の理由もなく都の至る所に機器を付けると、どうしてもそれを不満に思う輩が現れてくるのである。それを消すための、それは一つの手段だった。

 そして、どうして異端の能力を察知する機器を用意するかと言えば。
 他でもなく、魔族を消すためだ。

 彼らは異端とは全く違う存在ダリながら、用いる力は彼らの能力と同じような物。だからあの機器に彼らの力は引っかかる。写し取り、自らの物として取り込んで力を使う自分たちは、そんなことはないが。

 魔族は、どうしたって邪魔なのだ。月代と魔族は対。対というのは二つでバランスが取れていると言うことであり、同時に、両者は全く正反対の存在であると言うことだった。
 それが、仲良くなど出来るわけもないだろう。

 そして……それよりも、今は別の事態が進行している。
 バサリと机の上に書類を投げ置いて、リボンズはソファーにそのまま身を預けた。深く、体が沈む。

「妙な能力を使える人間だって……?」

 そんな存在、知らない。
 さらに体重をソファーに預け、リボンズは唸った。

「そんな…有り得るワケ無いのに……だって人間、だよ?」

 このような事態は、自分の予測するところではない。他の月代もだろうし、リジェネだって同じに違いないのに。何せ、自分に予測が出来なかったのだから。

 ともかく、そんな想定外の事態が、良い物であるわけがない。
 リボンズは爪をかみながら思考を巡らせる。

 恐らく、それは人間の『進化』とでも呼ぶべき事柄なのだろう。異端に、抵抗するために人間が長い年月をかけ、手に入れた力なのだろう。いくつか聞かされている能力は、おおよそがそういった事柄に応用できる物だった。

 何故、異端に対してといえるのか。
 それは、人間と異端が、月代と魔族のように対だから。

 ならば、何に対抗するためなのか……と考える際、そう考えて然るべきだろう。誰だか分からない何かに対してではなく、対である存在に対抗してと考えた方が、こちらとしてもひどく納得がいく。

「…今のところは問題にはならないようだけれどね…」

 ちらりと書類を見やり、息を吐く。
 そうはいっても、やはり。

「…不安な要素は消しておきたいんだけど」


 

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