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「他に欲しい物はあるか?」
「…ケーキ」
「イチゴとチョコとチーズとモンブランがあるが」
「……」
問いかけるとダブルオーは両の手の指を折り始めた。何かを数えているらしい。
そうして左手の指を全て折り終え、右手の指の小指を除く全ての指を折り終えて、少し俯いていた顔を上げて、言った。
「2、2、2、3」
「個数か?」
「…」
頷くダブルオーに従って、刹那はケーキのイチゴを二つ、チョコを二つ、チーズを二つ、モンブランを三つほど取った。
今、刹那たちはケーキ専門店に足を踏み入れていた。理由は他でもなくイライラし続けているヴァーチェや、現在進行形で胃を痛めている気がするデュナメスのために、甘い物を買って帰ろうという話になったからである。
昼食の方は買い終えている。その上、その中から少しだけ、刹那とダブルオーは既に頂戴してしまっていた。腹が減っていたのだから仕方がない。申し訳ないとは思ったが、やはり空腹には勝てなかったと言うことだ。
「これくらいで十分だな…会計に行くぞ」
「分かった」
あまり多く買っても全て消費できるとは思えないし、ケーキ九個にクッキーの袋が数個あれば十分だろう。クッキーの方は、保存も利くから残してしまっても問題は無いのだし。
レジで出来上がっている行列の最後尾に立ち、ダブルオーと隣並んでいると、ふいに彼女は直ぐ側の棚に手を伸ばした。何かと思ってチラリと視線をやると、そこには試食のパンの破片があった。
はぐ、とそれを食べるダブルオーの表情が若干ゆるんだのを見て、刹那も試食に手を伸ばし、食べた。…割と美味しい。
「それも買うか?」
「…別に良い」
「一つ二つ増えても変わらないが」
「…いらない」
間違いなく遠慮しているのだろう彼女に構わず、刹那はパンをさらに二つ取った。別に彼女が食べなくても自分で食べるので良いとしよう。こちらもケーキよりは保存が利くだろうし。
それから列が進んだので一緒に刹那も歩を進め、近くなったレジまでの距離を確認する。
確認して……そのレジに立っている人物の顔を見てフラリと刹那は気が遠くなるような気がした。気がしたというか、実際にした、ような気が。
「…刹那?」
「………………いや、何でもない」
「でも顔色」
「だから何でもない」
「でも」
なおも言いつのろうとするダブルオーに色々と乗せてあるトレイと財布を渡して、刹那はサッとその場から離れようとした。もちろん、レジに立っている人物には見つからないようにとこっそりと、である。
が、こう言うときほど相手はこちらに気付く物なのだ。
あ!と声を上げたかと思うと、某知人はブンブンとこちらに手を振った。背が高くなっていようと一気に年を取っていようと、顔事態が変わったわけでもなく、そもそも全く会うこともなかった相手にその変化が分かるわけもなく、いたっていつも通りの反応。
「刹那!テメェなんでこんなところにいるんだよ!」
「それはこちらが聞きたいんだが……何でここにいる、パトリック・コーラサワー」