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「ヴァーチェ大丈夫かなぁ…何か元気なかったけど」
「……それを本心から言えるお前が、俺はとても凄いと思う」
絶対に誰の何のせいでヴァーチェが外に出たかを理解できていない彼の対応型を見て、デュナメスは息を吐くことしかできなかった。
そして、全ての元凶たるセラヴィーはきょとんとこちらを見た。
「えぇ?何かとても含みがあるような言い方な気がするんだけど、それってきっと僕の勘違いだよね?まさかデュナメスまでそー言うことを言うと思えないんだもん。だってデュナメスは公平だからね、僕を勝手な思いこみで評価しないはずだと、僕はそう思っているんだもの」
「……」
いや、出来る限り公平でいようとしているからこそ言いたいのだが。
しかしその言葉を、デュナメスはのど元でぐっと止めた。どうせ言ったところで彼に効き目がないのは身をもって知っている。セラヴィーと対決しているのは何も、ヴァーチェだけではないのだ。
時々感じる皆の纏め役のようなポジションに収まってしまった自分に対するやるせなさを今、感じながらも諦めも抱いて。
「……とにかくだ、ヴァーチェは一人になりたいんだよ」
「それが僕には解せないんだよね」
ピッと右の人差し指を立てて、セラヴィーは言う。
…それはそうだろう。元凶であることを自覚していない張本人が彼なのだから。
そんな思いも知らないで、セラヴィーは言葉を続けた。
「一人でいると逆に気って滅入ると思わない?少なくとも僕は思うね。なら、ボクらと一緒にいた方がまだ気が晴れて、楽しい気分になれる物だと思うんだよ。多分これって間違っていないから、だから僕としては不思議でしょうがないわけで。何でヴァーチェは一人になりたがっているんだろうね?落ち込んでいるときこそ、みんなで一緒にいるべきなのにねぇ…?」
だから、その落ち込み加減をセラヴィーが助長してしまうからだ。
その言葉も堪えて、デュナメスは自覚がないというのは怖いのだと、今更ながらに実感した。彼相手だと本当にそれが分かって良い…いや、良くはないが。
とりあえず、もう少し色々と自重をしてくれないだろうか、この元・杖は。人型になれるようになってからは饒舌さに加えて身振り手振りが入るので、何だか活発さもバージョンアップしているし。もうちょっと静かになったら丁度良いに違いない。
まぁ、そう言ったら間違いなく「えぇ?でも静かなのとかが結構いるし、僕みたいに明るいのがいても良いと思うんだよね」とか返されて、さらに言葉が延々と続く様が浮かぶので、やはり言えない。
ちょっとしたストレスだ、これは。
今に始まったことではないけれど、と半ば諦めながらデュナメスは座った。
「ヒトにはそれぞれの考え方があるんだよ」
「だからって…これじゃまるで僕らを避けているみたい」
「…」
僕ら、ではなくてセラヴィー一人なのだが、この場合。
一体いつになったら気付くのだろう…気付いている気もしてくるんだが。
もし気付いててこのまま名のなら結構手強いというかたちが悪いと思いながら、隣に座るようにとセラヴィーを促す。
「…立ちっぱなしもなんだろ?」
「うーん…それもそうだね。ずっと立っていたらその分カロリーを消費してしまって、余計にお腹が空くかもしれないし。ところでデュナメス、僕ら人形なのにカロリーとかお腹空くとかどうなんだろうね?」
「凄い今更な議題だな」
それは永遠の謎というか、触れるべき箇所ではないと思うのだが。