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茶色のお題ももう少しでクリアできそう…その前に青と赤か。
14.チョコレート
差し出された物に、思わずアレルヤとティエリアは顔を見合わせた。
何なのかは分かる。分かるけれど、それがどうして今、この瞬間に目の前にあるのかというのが、どうしても理解できないのだ、というか、何というか……つまりは、いつもとは違う展開について行けなかったというのが正しいところだけれど。
ついついハレルヤにも尋ねかけてみるのだが、生憎と片割れは我関せずを貫くつもりらしく、返答は全く返ってこなかった。
逃げた。ほんの少し片割れのことを恨めしく思ったけれど、今はそれどころでもない。
困ったような笑みを浮かべて、差し出している張本人であるフェルトと…あと、何でだろう、刹那の方を見た。
「えっと、これは?」
「疲れたときには甘い物が良いと聞いた」
「だから……ちょっとだけ」
「…誰が言ったんだ」
「スメラギ・李・ノリエガ」
「だろうね…」
こんな事を言い出すのは、確かに彼女しかいない。
強いて浮かべるのなら、あとはそれから…
「それに…ロックオンも、言ってた」
「あぁ…やはりか」
「その通りだ、ティエリア・アーデ」
「チョコレートを買ってきたのはロックオンだし…」
「二人の共謀といえるかもしれない」
『いえる、じゃなくて、いう、じゃねぇのかねぇ』
「いえる、ではなくて、いう、ではないのか?」
ひょこんと思考だけ現して残したハレルヤの考えと、ぽつんと呟いたティエリアの言葉が見事に重なった。
あまりのタイミングの良さに、アレルヤは吹きかけたが慌てて堪えた。ここで笑ったら訝しげな視線を向けられるのは必至である上に、片割れがとても機嫌を損ねてしまうかもしれない。少しそれは遠慮したいのである。
だから代わりに普通の笑みを浮かべて、そうかもね、と止めるに置いた。
しかし、ハレルヤには自分の考えていたことが分かったらしい。
『…後で覚えてろやアレルヤ』
『……だって仕方ないじゃないか。本当にピッタシだったんだから』
『あれは不覚だったんだから忘れろ。俺だって好きで被らせたワケじゃねぇ。てーか、どうしてあんなヤツと好きで言葉を被らせる必要があんだよ』
『…ハレルヤ……そんなにティエリア気に入らない?』
『入るか』
それだけ入って捨てて、ハレルヤは再び『中』へと戻っていった。
対してアレルヤは相変わらずだなぁと苦笑を浮かべ、もうその話には触れないことにした。これ以上言ったら、本気で機嫌を損ねてしまう。
気持ちを切り替えて、アレルヤは差し出されている皿の上の、チョコレートのかけら一つに手を伸ばした。どれも似たような大きさだったけれど、その中でも少しばかり小さめの分に、だ。
「とりあえず、もらうね?」
「あぁ、是非食べてくれ」
「でないと…意味、無いし」
「……待て」
チョコレートを口に運ぼうとしたところで、制止の声を上げたのはティエリアだった。
彼は難しい顔で腕を組み、皿の上のチョコレートを、油断ならないと言わんばかりの目で見ていた。警戒心が丸出しである。何でそこまで警戒しているのかがよく分からないのだけれども。
それでも、その気迫は凄い物で、アレルヤは何だか気圧されるような思いを抱いた。一体、どうしてこんな事でここまで。
唖然としていると、彼はゆっくりと言い聞かせるように口を開いた。
「この件は、スメラギ・李・ノリエガとロックオン・ストラトスの共謀だということだったな…刹那・F・セイエイ」
「あぁ。だが…このチョコレートはロックオン・ストラトスからの物だぞ?」
「甘い」
びし、と指を突きつけて、ティエリアはかみ砕いて言い聞かせるように言った。
「少しでもスメラギ・李・ノリエガが関わっているんだぞ?もっと警戒は抱くべきだ」
「……いや、でもまさか」
「ミッション帰りのマイスターに鞭打つような真似をするとは思えない」
「鞭ではなく、別の何かをするためかもしれない。何かは知らないが」
「そんなこと言ったら…」
アレルヤは、完全に困ってしまった。
このチョコレートは、どうするべきなのか。
そんな平和な日々もあって良いと思います。