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この話の中で、元親はまぁ、お約束通りの種族です。
ていうかそれ以外が全然想像できません。政宗同様。
「紹介するぜ。コイツは元親。妖で種族は鬼。まぁ…俗に言う幼なじみ、か?」
「何か違わねぇ?」
「じゃあ、別の表現考えてみろ」
「…幼なじみか、やっぱり」
「近いのはな」
二人のポンポンと交わされる言葉のやり取りを聞きながら、いつきはもう、これ以上何かあっても驚かないんじゃないだろうかと思い始めていた。
何せ、竜の次に、鬼ときた。これで蛇まできても絶対に驚かない。いや、というかそんな状況があり得たら、いっそ恐ろしいと思うのだけど。
……妖には、色々な種族がある。自分たちのような雪女だとか、雪国には他にも雪童と呼ばれる妖や、雪男と呼ばれるだっている。他にもたくさんいて、しかしそれが雪国の中だけの話なのだ。そして、雪国というのはそれ程大きな面積を持っているわけでもない、辺境といえば辺境、という場所。
つまり、妖には色々な種類があるというが、正確に言うと『色々な種類がありすぎる』という事、なのである。
その中でも、特に強い三種族があった。
それがまぁ、竜と鬼と蛇なわけなのだが。
何でも、その種族の中にはそれぞれ一人ずつ、とても特別な存在がいるのだという。どのような存在なのかはあまりよくは分かっていないのだが、多分とても強い相手なのだろうとは推測できる。
しかし、それを差し引いてもその三種族は強い。付け加えて言うと、鬼と蛇は非常に中がよろしくないらしい。理由は不明だが。
ともかく、そんな事情があったので。
この状況は、いっそ夢と言われても納得できるような物だった。
そこでふと、いつきは慶次の方を見た。この人間は、果たしてその事実を知っているのだろうかと思ったのだ。見たところ何の表情の変化も見えないから、鬼、というのは知っていたのだろうが。
「…なぁ、慶次」
「何だい?」
「慶次は妖の中でも強い三種族を知ってるべか?」
「知ってるぜ。竜と鬼と蛇だろ。んで鬼と蛇は仲が悪いらしいな」
「そこまで知ってるだか」
「おう。全部あそこの二人の受け売りだぜ」
に、と笑って、慶次は政宗と元親を指さした。
確かに…あの二人なら、情報源としてはとても適切だろう。
成る程と納得していると、その情報源の一人が口を開いた、
「…ところで、なんだがよ」
「ん?」
「俺にあの嬢ちゃんの紹介はねぇのか?」
「何だ?気になんのか?」
「んなワケねーだろ。名前も知らないんじゃ呼びかけも出来ねぇ」
「それもそうだな」
頷いて、政宗は口を開いた。
「こいつは雪女のいつきだ。今日からこの街に来たらしいぜ」
「いつき?…まさか、お前雪女のかしらの娘か?」
「そうだべが、何で知ってるべか?」
「へぇ…こいつぁ運命を感じるねぇ」
訝しげに聞き返した自分の言葉を気にせずに、機嫌良く、しかも口笛まで吹いてこちらを見る相手に、苛立たしく思うより前に訝しく思う。どうやら母のことを知ってるらしいが、こちらは相手のことを全然知らないのだ。警戒しても文句を言われる筋合いはないだろう。
政宗はそんな状況で、まじまじといつきの顔を眺めていた。
「…そういや髪の色は一緒、か?」
「だろ。それに目元も似てんだろ。なまりもな」
「…分かんねぇ。ったく…どんだけ昔だよ、アイツと会ったの」
「忘れてても仕方ねぇか」
くっく、と笑う元親に憮然とした様子の政宗に、いつきは今度こそ本当に唖然とした。
知っているどころではなく、顔見知りらしい。そうでなければ目元なんて話は出てこないだろう。それは良いのだが、まさか母に竜と鬼の知り合いが要るとは思わなかった。その事実に、いつきは唖然としていたのである。
予想外にも程があった。
まぁ、母は何千年も生きている、それでいて未だに美しさを損なわない雪女の中でも希有な存在ではあるから、有り得ないこともないのだけど。
ところで、そんな母と知り合いであるらしい二人に質問だが。
「…おめぇら一体何歳だべか…」
「ん?それは秘密ってやつだな」
「言っても信じねぇだろ」
…そうかもしれない。
実はいつきは次期族長候補。という感じですよね、この流れだと。