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多分、おそらく、きっと、この話はギャグです。
03.君の彼女
心臓が、張り裂けそうなほどドキドキしている。
どうしよう、訊いてしまおうか。それとも……今までのように、黙ったままでいようか。
今、自分が思っていることは、他人から見たら、きっとどうでもいいこと。
だけれど、フェルト自身から見たら、とても大切なこと。
そう、とても、とても。
彼に会ってしまったら、どうしよう?
その時は……覚悟を決めて、訊くことにしよう。
アナタに、好きな人はいますかって。
もしもいると言われたら、大人しく諦めよう。彼が選ぶくらいだから、きっとすてきな人だろうから、素直に祝福をして。
微笑んで、送りだそう。
だけれど……決めたけれど、それでもやっぱりまだ……聞きたくない。
もう少し先、自分がちゃんとどんな事実でも受け入れられるような、そんな精神的に大人な人間になったら、その時に聞きたい。望まない答えを聞いても取り乱さない自信はあっても、最悪の場合のショックを受け流すことのできる自信は……あまり、持っていないから。
そんなことをつらつらと思いながら廊下を進んでいると……彼に、会った。
いつも一緒にいる人は近くにいなくて、珍しく一人でどこかへ向かっていた。イアンの所からの帰り、なのかもしれない。
この偶然の出会いを、どうとるべきかフェルトには皆目、見当がつかなかった。さっきまであんなことを考えていて、それからこういう出会い。これは……いったいどういう因果だろうか。
フェルトは勇気を振り絞って口を開いた。
「……付き合っている人は、いる?」
言った後で、あまりに速急すぎたと恥じる。もっと、世間話を話して、それから自然な流れを造り出してから切り出すべきだった。
スメラギにでも、指導を受けておけば良かった。
顔を赤くしていると、彼からは「いない」という返事が返ってきた。声の響きから、呆れを抱いているわけでもないし、困惑しているわけでもないと理解できる。
少し、ホッとした。
「……好きな人は?」
訊くと、これにも「いない」という返事。
この答えを耳にして、期待に顔を輝かせる。
……これなら、自分にもチャンスはあるかもしれない。
思い切って、フェルトは言った。
「……なら、私と付き合ってくれる?」
そして、彼は。
「イイヨ、イイヨ!ダイジョウブ!」
彼は……ハロは、肯定の返事を返してくれた。
「ハロ……ありがとう」
嬉しそうに飛び跳ねるオレンジ色の球体を、フェルトは捕まえて抱きしめた。
胸には、幸せがいっぱいだった。
お相手はハロでした、というオチです。