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正直、この話を読んだだけではタイトルの意味は分からないかも知れません。
その内、ちゃんと書こうと思っていますからこれはその入り、ということで。
佐助は、何とか今日一日無事のまま過ごさせることが出来た店を改めて眺め、多大な満足をもって笑みを浮かべた。
大変だった。店長は相変わらずこう言うところだけは放任主義である上に、幸村は失敗すると知っていながらも……いや、知っているからこそどうにかしようと、どうにかして手伝おうとするのである。
悪意からの言葉ではなく、言い負かすことも事が事なので難しい。素直に邪魔だと言ってしまうと、きっと彼は見るも憐れなくらいに落ち込みきってしまうだろう。しかも店の角の辺りくらいで。
些か、問題があるだろう、それは。
しかし、今回。
佐助は見事、幸村に別の用事を申しつけることによって危機を乗り越えたのであった。
それも、幸村に意図を知られないまま。
おかげで店は綺麗なままで、商品の中にも壊れてしまった物はない。完璧、というのは少し違うかも知れないが、いつもと比べると上々の状況だろう。
「さーて、そろそろ店じまいしないとねぇ」
空に浮かぶ太陽の場所を確認して、佐助は店の中に戻った。色々と片付けて、あとそれから帰ってくる幸村のために甘い物でも用意しておかなければ。
店が終わっても忙しいと苦笑していると、ふいに、足音が聞こえた。
幸村は浦口から帰ってくるだろうから客だろうかと、振り向いて、それから。
即行で視線を前方に戻して部屋に駆け込もうとした。
が。
「佐助、どうしたのだ?」
「……いやねぇ」
幸村の声がその存在の傍から聞こえてしまってはどうしようもないではないか。
冷や汗を流しつつ、佐助は再び恐る恐る視線を後方に向けた。
……何で。
何で、この、妖だけではなく人間も住んでいるこの街に。
こんな存在がいる。
「元親殿、ここが某の勤める店にござる」
「アンタ本当に働けんのかい?」
「む、失礼な。某とて…某……」
「…あー、悪い。聞いちゃなんなかったか」
「……」
「…なぁ、そこの兄ちゃん」
黙り込んでしまった幸村から視線を外して、元親、と呼ばれた存在はこちらに意識を向けた。
対して、どうしようもなく固まってしまったのは佐助だ。
だって、誰がどう対応できるというのだろう。
目の前にいるのは間違いなく妖だ。それは自分には容易に分かる。
問題は、その種族だった。
有り得ない、と心の中で呟くしかないような種族。
妖にとって、普通の妖にとっては手の届かない領域に住む彼ら。
その、三つの種族の内一つ。
それは。
鬼。
正直、妖がいるとはいえ人里に姿を現すような存在では、無い。
だが、目の前にその存在がいるのは紛うことなく事実であって。
ごくりと、緊張に唾を飲み込んだ。
「…何でしょう」
「コイツ、どうしたら良いんだ?置いていきゃ良いのかよ?」
「…あ…そうしてくれたら幸い」
「おう。んじゃ置いてくぜ。……にしても」
ちら、と次は真横で落ち込んでいる幸村に視線を投じ、呟くように、実際に呟いて彼は言った。多分、普通なら聞こえないような小さな声。けれども何の偶然か因果か知らないが、うっかりと佐助の耳には届いていた。
「随分と難儀なヤツだねぇ、こいつは」
「…?」
「さて、俺は帰るか。じゃあな、兄ちゃんよ」
思い切り訝しいと知らせるような表情を浮かべてしまったというのに、それに応じることなく元親は手を振って背を向けた。
実にあっさりと。
実に未練も無く。
彼の背中は見えなくなった。
だから、結局彼が幸村の『何』に気付いたのか、それは果たして自分が知っているのと同じ物であるのか。それを確かめることは出来なくて。
ワケが分からないことは、結局ワケが分からないままだった。
ただ、一つ。
あの相手はまた姿を現すだろうと、それだけは間違いなさそうだった。
鬼さんが街にやってきた頃の話。やっぱり過去っぽいですね。
大変だった。店長は相変わらずこう言うところだけは放任主義である上に、幸村は失敗すると知っていながらも……いや、知っているからこそどうにかしようと、どうにかして手伝おうとするのである。
悪意からの言葉ではなく、言い負かすことも事が事なので難しい。素直に邪魔だと言ってしまうと、きっと彼は見るも憐れなくらいに落ち込みきってしまうだろう。しかも店の角の辺りくらいで。
些か、問題があるだろう、それは。
しかし、今回。
佐助は見事、幸村に別の用事を申しつけることによって危機を乗り越えたのであった。
それも、幸村に意図を知られないまま。
おかげで店は綺麗なままで、商品の中にも壊れてしまった物はない。完璧、というのは少し違うかも知れないが、いつもと比べると上々の状況だろう。
「さーて、そろそろ店じまいしないとねぇ」
空に浮かぶ太陽の場所を確認して、佐助は店の中に戻った。色々と片付けて、あとそれから帰ってくる幸村のために甘い物でも用意しておかなければ。
店が終わっても忙しいと苦笑していると、ふいに、足音が聞こえた。
幸村は浦口から帰ってくるだろうから客だろうかと、振り向いて、それから。
即行で視線を前方に戻して部屋に駆け込もうとした。
が。
「佐助、どうしたのだ?」
「……いやねぇ」
幸村の声がその存在の傍から聞こえてしまってはどうしようもないではないか。
冷や汗を流しつつ、佐助は再び恐る恐る視線を後方に向けた。
……何で。
何で、この、妖だけではなく人間も住んでいるこの街に。
こんな存在がいる。
「元親殿、ここが某の勤める店にござる」
「アンタ本当に働けんのかい?」
「む、失礼な。某とて…某……」
「…あー、悪い。聞いちゃなんなかったか」
「……」
「…なぁ、そこの兄ちゃん」
黙り込んでしまった幸村から視線を外して、元親、と呼ばれた存在はこちらに意識を向けた。
対して、どうしようもなく固まってしまったのは佐助だ。
だって、誰がどう対応できるというのだろう。
目の前にいるのは間違いなく妖だ。それは自分には容易に分かる。
問題は、その種族だった。
有り得ない、と心の中で呟くしかないような種族。
妖にとって、普通の妖にとっては手の届かない領域に住む彼ら。
その、三つの種族の内一つ。
それは。
鬼。
正直、妖がいるとはいえ人里に姿を現すような存在では、無い。
だが、目の前にその存在がいるのは紛うことなく事実であって。
ごくりと、緊張に唾を飲み込んだ。
「…何でしょう」
「コイツ、どうしたら良いんだ?置いていきゃ良いのかよ?」
「…あ…そうしてくれたら幸い」
「おう。んじゃ置いてくぜ。……にしても」
ちら、と次は真横で落ち込んでいる幸村に視線を投じ、呟くように、実際に呟いて彼は言った。多分、普通なら聞こえないような小さな声。けれども何の偶然か因果か知らないが、うっかりと佐助の耳には届いていた。
「随分と難儀なヤツだねぇ、こいつは」
「…?」
「さて、俺は帰るか。じゃあな、兄ちゃんよ」
思い切り訝しいと知らせるような表情を浮かべてしまったというのに、それに応じることなく元親は手を振って背を向けた。
実にあっさりと。
実に未練も無く。
彼の背中は見えなくなった。
だから、結局彼が幸村の『何』に気付いたのか、それは果たして自分が知っているのと同じ物であるのか。それを確かめることは出来なくて。
ワケが分からないことは、結局ワケが分からないままだった。
ただ、一つ。
あの相手はまた姿を現すだろうと、それだけは間違いなさそうだった。
鬼さんが街にやってきた頃の話。やっぱり過去っぽいですね。
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