[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
途美学園の良いところその一は、ハレアレだけでなくて、マリー&ソーマを別々に出来るところとかだと思います。
10.落とし物
まずい。
この状態は非常にマズイ。
ソーマは、カツカツと音を立てながら、必死でとある物を探して学園内を歩き回っていた。とある物、というのはとある物、だ。何なのかはトップシークレットにして最重要機密である。少なくとも自分の中では。
そして、それは誰かに拾われてしまってはとても困る物だった。
拾われて、届けられでもしたら。その届けた先があの人だったりしたら。
もう、全てが水の泡になってしまう。
それは……避けなければならない。
特に、だ。ハレルヤ・ハプティズム。あの男にだけは絶対に渡せない。あの男はあるいは包みを見ただけでもソーマの所有物であると直感するかもしれない上に、事態を混ぜ捏ねて楽しくおかしく上の方から見ようなどと考え出しかねない。
絶対に、それは阻止する。
というかそれが実際に起こったら、上に昇ってハレルヤを蹴り落とす。
そのくらいは……当然の権利だろう。
などと考えながら曲がり角を曲がると、バッタリと出くわす双子の姉妹。
「あ、ソーマ。そんなに急いでどうかしたの?」
彼女は目を丸くして驚いていた。それは自分も同じだったが、驚き以上にこれは素晴らしい幸運だと感じたソーマはそのままマリーの手を掴んだ。
「良いところに来た、マリー。聞け、例の品が消えた」
「…!?何ですって!?」
「落とした場所が分からないんだが…心当たりはないか?」
「あるわけがないわ!…でも、それは大問題ね」
腕を組み、右の親指の爪をかみながらマリーが呟く。
「もしそれがあの人に見つかってしまったら…」
「私たちの作戦が全てパーだ」
「そんな大切な物を落としたのね、ソーマ」
「…不可抗力だ」
あんな小さな物、落としてしまうに決まっているではないか。
というか。
「文句を言うならお前が持っていたら良かったんだ!私は最初にその危険性は示唆しておいたし、それで納得したのはマリーだろう!」
「それはそれ、これはこれよ。とにかく貴方が落としたという、その事実だけは紛うことなく本物」
「く…」
確かに事実だけれど。
事実だけれど何だか理不尽な気がするのは自分だけか。
だいたい、あれを保管する役目を任されたのだって、半ば強引にだった。それに最初に注意もしたのだ、絶対に自分だったら無くす、と。それでも良いと言ったのはどこの誰だっただろう。
……理不尽所ではない。
だが、そんなことは気にもしない様子で、マリーは組んでいた腕を解いた。
「探すしかないわね。どの辺りを探したの?」
「そうだな……まず、一階部分は探し終えた」
「それで今、二階部分を探しているということね?
「そういうことだな」
ただし、二階にあるかどうかはあまり期待できない。今日はこの階にあまり来ていないし、となれば可能性は自然と低くなると言うものである。
隣り合って歩きながら、マリーが確認するように言う。
「部屋に忘れておいてきたって言うことは無いわね?」
「あるわけがないだろう。一緒に確認したのを忘れたのか?」
「…確かにそれもそうだわ」
「だから、無くしたとしか考えられないんだ」
「盗まれた、というのは?」
「あれを、か?一体誰がそんな…」
「確かにそ…」
「……」
「……」
一人だけ、凄く身近に可能性がある人物が。
…いや、まさかとは思うが。
……思う、が。
「…ちょっと訊きに行くくらいは良いわよね」
「そうだな、問題ないだろうな」
二人で顔を見合わせて、ふふふふふ、と笑う。
これで犯人がアイツだったらとことん締めさせてもらおう。
多分、可能性がある人物=ハレ、だったりするのだと。