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ゆっきーがお出かけしたら大分静かになると思うんだけど…。
002:明鏡止水
いつになく静かな、その部屋のその夜に。
佐助はどうしてだか、酒の相手をさせられていた。
…しかも、信玄に。
どうしてこんな事になったのだろうと、思ったところで答えが出るわけでもない。まぁ、強いて言うのならば成り行き、というところだろうか。
そして静かな理由と言えば。
いつも騒々しいあの旦那がいないからである。
「旦那…ちゃんと向こうで大人しくしてるでしょうかね」
「さてのぅ…」
「失礼してませんかね…」
気になって気になって仕方がない幸村の『お泊まり会(外泊に非ず)』であるが、彼本人から「来るな」と言われてしまったら仕方がない。こっそり行っても、こう言う時だけ妙に鋭い勘を使って自分のことを察知するに違いないのだ。
全く、困った人である。
「しかし…」
と、信玄が何かを言いかけたところで思い出す。幸村に対する心配を語り合う相手が欲しかったところで、丁度この人が出てきたのだ。
思い出しながらも、佐助は黙って信玄の言葉に耳を傾ける事にする。
「…静かであるというのは、ちぃと寂しいものじゃのう」
「ま……いつもが騒々しいですからねぇ」
それが突然こうなりもすれば、寂しくなるのも至極当然というもの。
だからといって、早く帰って来いとも思えないのはどうしてだろうか。寂しい、というのが普通と違う種類の『寂しい』なのかもしれない。
考えたところで意味はないけれど。
意味がないから考えるのを止めて、佐助は手元に持っていた酒を一口飲んだ。
「たまには静かも良いかと思ったんですけど」
「ほう。して、どうじゃ?」
「正直、微妙ですね」
騒がしいのに慣れすぎて、この家にいるときまで静寂の中というのが何とも不思議で。
早く帰ってこいとは思わないが、それでも。
何かこの二人で酒を飲み交わすのってアリかなぁとか思って。