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この奇跡的な数字の時に、ナッポーが出せないのは少し悔しいですが。
今回はクロームとハルの話。
069:嘘
それを、言ってしまって良いのか。
クロームには、全く見当が付かなかった。
言ってしまうべきなのか。けれど、言ってしまったら傷つきはしないだろうか。傷つけてしまったら、果たして彼女はどんな表情をするのだろう。泣くのか?詰るのか?怒るのか?詰め寄るのか?それとも……笑うのか?
ただ、自分に心配をかけまいと?
仕方がなかったのだと自分自身に言い聞かせて、その心を削って?
それが、有り得ない話ではないと思えた。
思えたから、何も言えない。
言いたくない。
「…クロームちゃん?どうかしました?」
「……うぅん」
「けど、スプーンが止まってますよ?」
「…ちょっと、考え事」
ハルに、そう言ってクロームは少しだけ笑って見せた。苦しい笑み。
今この瞬間、どうしたら良いだろう。手元のスープに視線を落として思う。今まで、彼女には何度も支えてもらった気がする。近い年代の近しい人というのはあまりいなくて、無償というのも信じられなくて、そのせいで最初は戸惑ったし困ったけれど今は、普通に受け入れることが出来る。それは全て彼女の、彼女らのお陰だ。
だから、恩返しがしたいと思うのに。
これを言うことは、恩返しにさえならない。
なのに。
「クロームちゃん、無理に笑うのは止めるべきですよ?嘘はいけないんです」
「え…?」
「何か、シークレットなことがあるんですね」
言葉に詰まった。それは、表情を見るだけで分かってしまう物なのか。
動揺しているクロームに、けれどハルは笑って返した。いつもと同じような笑み。
「大丈夫です!ハルは、無理に訊いたりしませんから。クロームちゃんが言えるときになってから言ってください!」
「…ハル」
その笑みに自分と同様の苦しみがあるのを見て、泣きたくなった。余計に、言えない。
綱吉が、いなくなってしまったなんて。
結局生きていたわけですが、十年後獄寺君の様子からして…クロームたちには知らされてなかったのかなと思うと、ちょっと何とも言えませんね。