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幼少というか、どうしてもこういう物になるとハレルヤアレルヤ寄りになってしまいます。大好きだから仕方ないのだろうかな。
19.息が続く限り
今日の追っ手は意外と強かった。
「…っち…」
脇腹に開いた穴を左手で押さえつつ、右手でナイフを握りしめながら、ハレルヤは壁に背を預けて、ずる、とその場に座り込んだ。
不覚、とはこのことを言うのだろう。
恐らく、もっと早く気づけたはずなのだ。そうすれば傷も何もないままに、相手をただただ嬲りいたぶり殺し尽くせるハズだったのに。
しかし近日続いた平和で退屈な日々のせいだろう、勘が鈍っていたのである。
お陰でこのザマだ。
全く、平和というのは何よりも手強い敵だった。
「あー…痛ェ」
幸いに追っ手どもは全員殺せた。だからこそこうして座り込んで休息を取る事を許されているのであって、休息を取るにはそうするほか無かった。もっとも、そうであろうと無かろうと虐殺は確定なのだが。
だいたいあんなヤツら、生きていようと自分たちの…それどころか世間の益になるような事をするわけがない。ならば酸素の無駄を押さえるべく、殺した方が世界のためというものだろう。
少なくともハレルヤにとってはそうだ。
同じ空気を吸うから気持ち悪いとは言わないが、同じように空気を吸っていることは気にくわない。
だから全員殺す。
目の前から消す。
だというのに片割れときたら。殺すな殺すなとあまりに煩いから、半ば強制的に意識の中に沈めてやった。いつもならこうは上手くいかないのだが、今回はすんなりいった。それも今までの経験から分かっていたことだし、理由も分かっている。
理解しているのだ、アレルヤも。
無駄とは思っていないだろうが、気持ち悪いとも気にくわないとも思っていないだろうが、殺すことを片割れも肯定している。
そうしなければ、自分たちがいずれ死ぬ。
出来る内に敵は消さなければならない。
それでも、分かっていても実行できない優しい優しい片割れは、無意識のままに自分に全てを任せて抵抗もなく意識の下に隠れる。
全く、素晴らしいほどに偽善者だ。
けれど、それで良い。
それでこそ片割れ。
見殺しの犯人。
同罪の子供。
それでこそ、自分の片割れに相応しいというものだ。
さて……そんな片割れにも、そろそろ起きてもらおうか。敵は殺した、敵は消えた、ならば差し迫っての危機は消えたし、殺したと言うことだ。起こしても問題はないし、むしろいい加減に起きて痛みを半分持って行けと言う気分である。まぁ、痛みを持っていくというのは有る意味気休めの名前であって、痛みが消えるわけではないが。正直なところ、二人の命を守ったからこその痛みを、一人だけ負うのが気に入らないだけである。
「おい、アレルヤ」
『…』
「起きろ」
『……う』
「…」
意識の底で目を開きかけて閉じた片割れを感じ、ハレルヤは。
思い切り、脇腹の穴を抉った。
「…っ」
『…痛っ!?』
「…よーやく起きやがったかこの寝坊助野郎」
『ハレルヤ機嫌悪…って、怪我してるよ!?ハレルヤ…大丈夫なの!?』
「大丈夫なのってお前な」
思わずその言葉に呆れ、ハレルヤはため息を吐いた。
「他人事じゃねぇだろ。俺が怪我してるって事はつまり、お前も怪我してんだろうが」
『でも…今はハレルヤの怪我だ。大丈夫なの?』
「死にはしねぇよ」
『…ハレルヤはそればっかり』
片割れは言う。
『死にはしないって、そんな無茶をしてたらその内死んでしまうよ』
「そんときゃそんときじゃねぇか。死ぬまで生きるだけだろ」
ただそれだけの事なのだと、ハレルヤは静かに笑った。
生きることに執着するハレルヤがこう言うとはちょっと考えにくいけど、もしかしたら心の片隅にはこういう思いがあったかも知れません。彼は何だかんだと言って、一番全てを見通してたから。
それと。
死ぬまで生きるって言うのは、とにかく死ぬまで生き続けるって事なんです。
ただそれだけの話。