Type3 02：告白

小さい頃からずっと一緒にいてくれるって素晴らしいと思います。

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02：告白



「小十郎、小十郎は結婚などしないな？」
「…はい？」
　幼い主のその言葉に、思わず間の抜けた返事をしてしまった自分は、果たして間違っているのだろうか…いやそれはないだろう。流石に、ここまで突拍子もないことを突然言われると反応に困る。
　にしても、一体どうしてそんな話が。
　しかも…どうやら、質問の様子からして結婚をして欲しくないようだし。
　どこか不安げにこちらを見上げる梵天丸に視線を合わせるようにしゃがみ、小十郎は真っ直ぐに主の片方しかない目を見た。
「何故そのような事をおっしゃるのですか？」
「…使用人の中に、いただろう？結婚をして出て行った者が」
「おりましたな…そういえば」
　そして付け加えると、その娘は梵天丸に好意的だった。
　となれば…成る程と、結論は一つしか出ない。
「梵天丸様」
「何だ？」
「この小十郎、貴方様の傍から離れようなどと思ってはおりませぬ故、どうかご心配なさらぬよう」
「そうか？」
　見るからにホッとした表情になる主を微笑ましく思いつつ、ですから、と小十郎は次の言葉を付け加えるのを忘れなかった。
　つまり、先ほど出た唐突な質問の『理由』である。
「お一人になって寂しい思いをすることはありませんので安心なさってください」
「なっ……俺は別に寂しいなんて思ってないぞ！」
「そうですか？」
「そうだ！」
　ムキになってそう梵天丸は反論してくるのだが、ムキになればなるほどそれが肯定の代わりをしていることにはまだ気付いていないようだ。とにかく違うのだと、言い当てられた恥ずかしさから紅潮している頬はそのままに、懸命に否定してくる。
　微笑ましいと思うのは、決して自分だけではないだろう。
　だが…まぁ、微笑ましいからと言ってずっと微笑んで見ているわけにもいかないだろう。
　全く動じない小十郎を見て、ついには頬を膨らませた梵天丸の頭にポンと手を乗せてから、ゆっくりと立ち上がる。
「では、百歩ほど譲ってそういうことにいたしましょう」
「譲るなっ！ちゃんと認めろ！」
「ならばおおまけにまけて五十歩ほどで」
「小十郎、それは五十歩百歩だろう！？」
「おぉ、ちゃんと覚えておいででしたか」
「昨日教わったことくらい覚えている！…それで、ちゃんと認める気は」
「ございませんね」
「…」
　断言すると、梵天丸は言葉に詰まった。この後どう言ったら説得できるだろうかと考えているに違いない、が。
　分かっているだろう。断言した自分の考えを変えるのは少しばかり難しいと言うことを。
　必死な様子で思考を巡らせているらしい政宗だったが、数秒後、諦めたのかはぁとため息を吐いた。子供なのにそう言うところだけ妙に大人びているというか…何というか、だ。少なくとも子供っぽいため息ではない。
「仕方ないか…けど本当だな？」
「何がでしょう？」
「一つしかないだろう？」
　じ、と睨み付けるよりは柔らかに、何気なく見ると言うよりは鋭い視線をこちらに向け、梵天丸はそのまま言った。
「俺の側からずっと離れないと言った、それは本心だな？」
「その様なことですか」
「その様だろうと何だろうと、俺にとっては大切な事だぞ、小十郎」
　右目に去られてはかなわないからと、梵天丸はそう言ってこちらをしっかりと見上げた。
「で？返事は何だ？」
「はい、という返事しか受け入れてくれないのでしょうに」
「分かってるな、小十郎。そうだよ、俺はそれしか聞かない。けれどあえて訊く。ずっと離れないんだよな、小十郎」
「返事をする必要すらないと思いますが……答えを求めていらっしゃるのならばお答えしましょうか」
　そこで一息置いて小十郎は、言った。

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そんな感じの幼主従。ただし小十郎はしっかり大人っぽいですが。何歳差くらいあるんだろうか、あの二人…？