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日輪学院の体育はやばいと思うんだ。
今回は一年生たちの話です。
「…槍はありませぬか」
「いや、普通に置いてねぇだろ」
「では物干し竿で構いませぬので」
「物干し竿VS竹刀かよ。恰好つかねぇぞ?」
「…むぅ」
「諦めろ」
「仕方ありませぬ……では、素手で真剣勝負を!」
「アホか」
政宗はそう言って、炎でも背負っているかのような幸村の脳天めがけ、持っていた木刀で思いきり振り落とした。
クリーンヒットしたその打撃の結果、倒れ伏す好敵手を見下ろす。
「お前な、体育の授業で真剣勝負してどうすんだよ」
「しっ…しかし、どのような時にも全力をとお館様が…っ!」
「だとしてもTPO考えろ」
「…では、政宗殿」
ゆっくりと体を起して、彼はビシィ!と武道場のとある一角を指さした。
「あの二人はどうなのでござろう!?『てぃーぴぃおー』とやらを気にして…痛っ!?」
「TPOだっつーの。ちゃんと発音しろ」
「…うぅ……二発目はきついでござる…」
再び倒れ伏した幸村の後頭部を踏みつけつつ、政宗は彼が指さした方に視線を向けた。
……まぁ、アレを見たら、彼の言いたい事も分かる。分かるけれど、だからといって話に乗ってやるかどうかは別問題だと思うのだ。…仮に乗ったとしたら、多分体育の教員が可哀想な事になるのだろう。
それはちょっとマズイだろうと、二人の事を凝視したまま動かない教師を見る。どうやら、何か大変な事が起きないかと心配で心配で仕方なく、目を離す事がどうしても出来ないらしかった。
気持ちは分かるので、どうにかしてやりたい気もする。
もっとも……何一つとして出来る事はないのだが。
今日は何時になったら止まるだろうかと、彼らが止まるのを待つのが一番賢明な判断だろう。初期の頃、一回止めに入ろうとして死にかけた事があるから、それは殆ど間違いのない事実である。
「つーか毎回毎回…飽きねぇよな、アイツらも」
「喧嘩するほど仲が良い…というのでは?」
「じゃあ何で本気の殺気がアイツらから出て来てんだよ」
「……思わず?」
「どんな思わずだ」
床に伏したまま首を傾げる幸村に思わずため息を吐きつつ、話の中の二人……つまり、慶次と半兵衛の様子を確認する。
二人とも竹刀を構え、相手を観察している状態だ。まるで、何かきっかけがあれば直ぐに崩れるような脆くて破れやすい均衡を保ち、相手の隙を探して今か今かと一撃必殺を狙っているような。
あの二人は…何だかよくわからな二人だ。
普通にしていたら普通に喋るし、その中に多少の険悪さが見える事もあるが、それほどまでに酷い物ではないと思う。それに、いざとなったら手を組んで一緒に事に当たることだって、ありはするのだ。
それが、今この場では混じりけ無しの殺気をぶつけ合っている。
いや……本当に何なんだろうか、この二人の関係と言うのは。
…ちなみに、二人が竹刀を持っていて自分が木刀を持っている理由なのだが、簡単な話で、この木刀は自分の家から持ってきた、政宗専用の木刀なのである。対幸村用に持ってきていたのだけれど、まさか本当に使うことになるとは思ってもみなかった。
そして、そんな木刀がここにあるというのに教師はやはり見向きもしない。
…だから信玄とかに任せればいいと言っているのに全く…。
言えばすぐさま了承して、こちらへ飛んでくるだろう幸村にとっての『お館様』の事を思いつつ、ピクリとも動かない二人から視線を外す。
「お、いたいた。小太朗、ちょっとこっち来い」
「……」
武道場の隅の隅に立っていた小太朗は黙ったまま呼び掛けに応じ、ちょこちょこと素早い動きでこちらに向かってきた。
そうして真横まで来たところで、政宗は口を開いた。
「いざとなったら俺とお前と幸村で止めに行くぞ」
「……」
「承知いたした……故に政宗殿、」
無言の肯定と肯定プラスαを聞いて、視線を下に向ける。
「…出来れば…足をどけていただきたいのですが…」
「…あ、悪ぃ」
そういえば幸村を踏んでいたのだったか……すっかり忘れていた。
謝って、政宗が彼から足を除ける頃。
慶次と半兵衛が、同時に床を蹴っていた。
マイ木刀、当然ですが六本家にあります。一本持って来たんです。
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