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絶対に、あれだよ。ハレルヤは雨の中の子猫をおいていけない。
登場……ハレルヤ、アレルヤ、刹那
仮登場…留美、ティエリア
……どうして今日、外へ出てしまったのかと、本気で後悔した。
ザァザァと降る雨の音、自分がさしている傘の色……それから、目の前の段ボール箱の中に入れられている子猫。
ニャアニャアと鳴いている猫は、全部で三匹。箱には『拾ってやってください』という注意書き。そんなものを書くくらいなら、近所を回ってでも飼い主を見つけ出せばいいのに。これは実に無責任だ。
というか、一体この状況は自分に何をさせようというのか。拾えというのだろうか、飼えというのだろうか……。
子猫が三匹増えたところで問題はないかもしれない。すでに寮には猫が五匹いるし、四階には鳥も三匹。そういえば、学園内には野生化したハムスターもいるのだったか。これだけ密度があるのだから今更どうなろうと、誰も咎めはしないだろう。
連れて帰ったとして……しかし、そうしたら、からかわれることは必至。特にあの眼鏡とか。バカなミハエルだって何か言うだろうし……それは非常に避けたい状況ではあるが、メリットだって十分にある。片割れがとても喜ぶだろう事だ。それがあるから、危険を冒してでも行動をする価値は無いとは言えない。
どうしようか考えて……結局、連れて帰るのは断念することにした。拾って行くには、色々と問題があることに気がついたのだ。
あの学園には、彼らに対して危険が多すぎた。エクシアたち寮の猫は良いとする。ドライたちトリニティの鳥、スローネも。番犬のフラッグだって大丈夫だろう。彼らは基本的には友好的だ。基本的に、だが。嫌いな相手には、それはもう凄い勢いで突進していく。とても分かりやすい例としては、グラハムに対する猫たちの反応だろうか。が、それは例外中の例外。考慮の外に置いても大丈夫だ。
だが……集団で襲いかかってくるハムスターに、たまに現れる強そうな鷲、それに人間かどうか酷く疑わしい学園所持者、アル中でおもしろいことが好きな理事長、魔王かと恐れられている三年生女子、冷たく無愛想でわりと自分勝手でいつもいつも偉そうで気に入らないというか王様気質というかあの大きすぎる態度はどうにかならないのかたまに殺意が湧くんですけれど大切な片割れに近付くなという眼鏡の三年生男子の生徒会会長……といった、どんな時でも常に恐ろしげなメンバーがいるのだ。あの学校は。
絶対に、こちらにいるほうが彼らのためにはなるだろう。
しかし……放っていくのも、何だか。見過ごした感があって、酷く気に入らないというか……そう、彼らの元飼い主と同じになったようで。
考えた末、思いついた方法が一つ。
それを実行するべく、黙って携帯を上着の内ポケットから取り出す。
アドレス帳からとある名前を選び出し、ボタンを押す。
少しのコール音の後、電話口に相手が出た。
『まさか、貴方から電話が来るとは思いませんでしたわ』
……これが、相手からの第一声。
まぁ、それは自分も思っていたことだったから、ついつい苦笑してしまったが。
「俺も、テメェにかけるときが来るとは思ってなかったぜ」
『でしょうね。同じクラスにいるだけの、単なる顔なじみですもの。で?用件は何です?』
「あー、お前ん家って、でけぇよな。場所が有り余ってるくらい」
『えぇ。そうですけれど……』
それが何か?というような響き。
……さて、ここからが腕の見せ所か。
「小せぇ猫を三匹くらい、余裕で飼えるな?」
『それはまぁ……何です?飼えと?』
「ま、そゆことだな。どうだ?」
『生憎、そんなことをする気は……』
「口実になるぜ?」
断ろうとした相手の言葉を遮り、口を開く。
電話の向こう側の、困惑の気配を感じる。
『何の?』
「子猫飼ってるって言ったら、絶対に行くヤツがいるだろ」
『……なるほど。そういうことですか』
納得の、感嘆の息を相手は吐く。
「そ。お前だって、アイツのこと嫌いじゃないだろ」
『好きですわ。というか…彼のことを知っていて、嫌える人は学園にいるんでしょうか?』
「いないんじゃねぇの?あの性格だしな……で、どうすんだ?」
『決まっているでしょう』
何を分かり切ったことを……と相手は続けた。
まぁ、確かに、そういう風に仕向けたのだから、始めから結果は分かってはいたけど。
『貴方は今、どこにいるんです?』
「お帰りなさい、ハレルヤ……遅かったね。どうかしたの?」
「いや、ちょっとな」
窓から部屋に入ると、心配そうな表情の双子がいた。
時計を見れば、帰ると言った予定時刻からはかなり過ぎている。心配をさせてしまうわけだ。反省はしておこう、一応。
とりあえず土産のアイスを机の上に置き、ソファーに腰掛けた。
靴はもう脱いだ。窓際に敷かれていた新聞紙の上に、二足とも転がっている。用意をしてくれたアレルヤに感謝、である。ちなみに傘は下に立てかけており、明日の朝、回収する予定だ。
あの猫たちはどうなっただろうかと思いながら、ハレルヤはアイスの袋を開いた。
翌日、靴箱に人だかりが出来ていた。
訝しく思いながら、アレルヤと一緒に近付くと……どうしてだろうか、人混みが割れた。
それにさらに疑問を抱いて、靴箱の側面に貼ってあった紙を見る。
……それは写真だった。
もっと正確に言うと、自分が子猫の入っている段ボールの前にしゃがんで座っていて、猫たちが雨に当たらないように傘を傾けている写真。
一体、何時……いや、昨日しかない。だが、どこから……あの辺りには死角が山ほどある。隠れるにはもってこいだ。では、誰が……。
思って、プチン、とどこかが切れた音がした。
「……オイ、誰だこれ撮ったの……っ!」
「ハレルヤ!?落ち着いて…っ」
唸るように呟くと、慌てた様子のアレルヤの声が。
正論であろう彼の言葉に、ハレルヤはがおうと噛みついた。
「落ち着いてられるかっ!?こんなん貼られたら俺のイメージとか……」
「そんな物を気にする必要はない。お前はすでに『ブラコン』として記憶されている。これ以上別のイメージが生まれることはないと思うが」
「刹那!?どうして二年の方に…」
「そろそろ、アレルヤたちが来る頃だと思って来た」
ゆっくりと歩み寄る彼の手には、貼られている紙と同じ物が。
「一年の方にも貼ってあったぞ。さすがにマズイと思って剥がしてきた」
「……本当に?」
「マジで犯人誰だッ!」
アレルヤは驚き目を見張ったが、ハレルヤはそれどころではない。
三年生の方にも貼ってあるに違いなく、学園中の壁という壁にもあるだろうことは、容易に予測が出来……いや、さすがにそこまでいかないかもしれない。が、近い状態では有ると思う。少なくとも、三年の靴箱の方にはあるだろう。
「犯人は、ティエリア・アーデだ。紙の裏側に名前がある」
「え?……あ、本当だ」
「……そうか、あの眼鏡か……」
「…ハレルヤ?」
先ほどまで見ていた貼り紙を剥がして確認していた片割れが、恐る恐るといったふうにこちらを見た。嫌な予感でもしたのだろうか。
だが、今は最愛の片割れに構っている場合ではない。
「今回こそ、殺す……」
「だっ……駄目だよハレルヤ!だいたい、君がティエリアに勝てたことって…」
「アレルヤ、止めたいのだというのは分かるが、それでは火に油だ。それにハレルヤ、こんなあからさまなマネは多分、罠だと……聞いていないか」
刹那が冷静なツッコミを入れている間にも、ハレルヤは走り出していた。
目的地は当然、三年C組。
あの、いけ好かない眼鏡のいるだろう教室。
ハレルヤにとって
アレルヤ→大切
留美→取引相手
刹那→チビ
ティエリア→気に入らないって言うかうざいっていうか存在自体認めたくないというかそもそもどうしてあんなやつが……
というノリです。