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ちょっと紅い人と蒼い人と黄色い人にバスに乗ってもらいました。
時間のせいなのか、バスの中は乗客が自分たち以外存在していなかった。
そんな状態のバスに乗ったことなど数えるほどしか無いせいか、今と言う時間が随分と貴重な気がする。そんな事を思いながら、政宗は幸村と慶次と共に、一番後ろの五人は軽く座れるであろう席に座った。五人ではなく三人だが、まぁ、これだけ人がいないのだから少々占領してしまったって問題は無いだろう。
進行方向を向いて左側の窓際を陣取って、乗り込むのが最後だったせいで真ん中に収まる事になった幸村に視線をやる。
「降りる場所は分かってんだろうな」
「無論!しっかりと書き記してきたでござる!」
「なら良いんだけどね……」
どこか不安げに、ぼつりと慶次が呟いた。
そう呟きたい気持ちは、本当によく分かる。何せ相手は馬鹿む……もとい、幸村だ。彼の『しっかり』程頼りにならないものは無く、しかも、とんでもなく最悪な事にその事実に彼自身が気付いていない。
そのせいで自分は駆り出されたのだ。佐助が、今日は用事があるせいで幸村についていられないから代わりにお願いとか必死に頼んで来たりしたから。旦那を一人にしたら絶対に迷子になるからだなんて、説得力があり過ぎる言葉まで使って来るから。……おかげで一日中家でダラダラとする休日ライフ計画が見事に台無しになった。
この埋め合わせは今度させようと心に決めながら、今流行りの和菓子店に思いを馳せている甘党が取り出したメモを覗く。
……思わず幸村を殴った。グーで。
「ごふっ……何をなされる政宗殿!?」
「Be quiet!何だこのミミズが這ったみてぇ文字は!」
「うわぁ……こりゃ読めないわ」
非難の声をかき消す政宗の叫び声に賛同するように、慶次が眉を寄せる。
対して、幸村は殴られた頬をさすりながら、ムッとした表情を浮かべて立ち上がった。
「失礼な!確かに殴り書きました故、蚯蚓の様になっていると言われても致し方ない……しかし!読めぬとはどういう事でござるか!」
「いや、まんまだって。そのまんま。読めないよこれ」
「某は読めますぞ!?」
「そりゃテメェだけだ!」
「佐助もでござる!」
「あの人の場合は単なる慣れだよ絶対!普通は読めないの!」
「何と!?それは本当にござるか?」
「本当だよ!」
「気付け!」
「……むぅ」
流石に二対一では分が悪いと思ったのか、それとも反論が上手く思いつかなかったのか、幸村は小さく呻いて勢いを弱めた。
それから腰を下ろした真ん中の彼を、で?と政宗は促した。
「どこで降りりゃいいんだよ。言え」
「今井殿の屋敷前の停留所、」
「え?それって次の所じゃん」
「……の、前の前の停留所でござる」
「………………は?」
さらりと幸村によって告げられた事実に、慶次は呆けた声を上げ、政宗は目をぱちくりと見開いた。
そんな自分たちの耳に、今井の屋敷を通り越したと言う情報が届いて、そのまま頭の中を通過、素通りして去って行った。
そうして訪れるしばしの沈黙。
また別の停留所を通過したと言うアナウンスが聞こえてきた頃、政宗は我に帰った。
慌てて『止まります』と書かれているボタンを押し、すぐ横の幸村の襟首を掴んでガクガクと思いきり前後にゆすった。
「テメェは!何でそんな分かりにくい書き方してやがんだ!」
「そっ……そのようなことを申されても、この情報を教えてくれた御仁はその様に申されたのでござる!」
「だからってそのまま書くんじゃねぇ!」
「ていうか誰!?誰がそんな面倒な教え方したわけ!?」
「半兵衛殿でござる!」
「アイツか!元凶アイツか!」
「ってことはあれだよね、半兵衛のヤツ絶対に意図的にそーゆー教え方してるよね!」
「何と!?それは誠でござるか!?」
顔に驚愕の色を浮かべる幸村に。
政宗は、本日二度目の拳を見舞っていた。
半兵衛ならそういうことだってやるさ、ということで。
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