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アレルヤは焦っていた。
非常に、焦っていた。
刹那の申し出と、ロックオンの提案。
二人の言葉は実に嬉しいものではある。あるのだが……ずっと前から血を貰っているティエリアとは違って、刹那からはたまに貰う程度でしかなくて、昨日ももらっている。ロックオンに至っては始めてだ。
躊躇も、するわけである。
「悪いよ、そんなの……」
「本人が良いと言っている。気にするな」
「それは……」
そうかもしれないけれど、多分、また彼から貰ったら(ロックオンから貰っても)、ティエリアがもの凄く怒る気がする。昨日も機嫌が悪かったし。
好意を受け取って怒られるか、遠慮をして機嫌を直して貰うか。
実は、結構難しい話だった。
どうしよう……と考えている内に、また眠気が襲ってきた。
突然のことだったのでバランスが崩れ、ふらりと倒れそうになって……誰かが、背中を支えてくれた。
誰?と思って見れば、そこには白い髪の少女が。
「ソーマちゃん!?」
「相変わらずですね、アレルヤ」
彼女の姿を認めて一気に目を覚まして見ると、金眼の少女が呆れとも何ともいえない視線を寄こした。
「訊くまでもありませんが……ちゃんと、私の分も朝食を用意しましたか?」
「それは当然だよ。ちゃんと人数分作ってある」
「ならいいです。アレルヤのご飯は美味しいですから」
改めて立ち直して話し、ふと刹那立ちの方を見ると、二人とも何かに驚いたらしい。呆然とした表情を浮かべていた。
どうしたのかと想い、気づく。
ソーマが、普通に現れず、いつものように『力』を使って出現したからだ。
「ソーマちゃん……『扉』は開かずに歩いてこようよ。僕の部屋からここって、そんなに遠くないよね?」
彼女の『異端』としての力は、『扉』と呼ばれる世界の裂け目を造り出すことだ。
この裂け目は、別の次元に繋がっているらしい。そこは距離も時間も曖昧な場所で、この世界と隣接しているとかなんとか。ソーマは裂け目を造ってそこから入り、その次元から再び裂け目を造り出して、出たい目的の場所に出る。距離の曖昧な空間を通るからか一歩で一秒で、山を一つ越えることもしばしば。一瞬で世界の裏側にだって行けるらしい。
テレポートみたいなものかもしれない。一番近いのは。全く違うけど。
「無理です。ハレルヤと競争をしていましたから。負けるわけにはいきません」
「そう、なの?」
ソーマの答えに、何となく納得した。
何故なら、さっきからドタドタという、とても聞き慣れた足音が聞こえてくるから。
ちょっとだけ、アレルヤは笑った。