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IF展開の起承転結・結っぽいの。
あの後について。
あの後について。
「良かったのか?」
「何がだ」
「こんな事を、しでかした事が、だ。貴様らは、これで良かったのか? これではアイツの所には、もう、おれんだろう」
「……あぁ、そっちか。てっきり私は、奉先を置いて来た事について訊いているのかと思ってしまったよ」
「あれについては……心配する方が、馬鹿らしい」
「……だな」
「だから、そちらは良い。どうなのだ、実際」
「そうだな……私としては、別に構わない、というところか。奉先がそうすると決めたわけだから。きっと高順と陳宮と……もちろん赤兎馬も、同じような気持ちだろう」
「呂布は……言うまでも無い、か」
「決めたのはあいつだからな。これで良く無かったとか言ったら私が張り倒すぞ、多分」
「張り倒すのか」
「もっと良く考えてから実行しろ、と言いながら、な」
「苦労しているな」
「まぁ、そこそこには、な」
「……ところで」
「ん?」
「これからどうするつもりだ」
「お前の領地に入ったら、適当な村か町か……とりあえずどこかにお前を押し付けるつもりだ。そうすれば、後はどうにかなるだろう」
「その後は」
「その後か。そうだな、とりあえず奉先たちを回収に行く。それからのことは、その後に決めるさ」
「決まっていないのか」
「決まってはいないな」
「では、『次』がいつか分からない……という事か」
「だな。……だから、そのいつかまでは死ぬなよ?」
「言われるまでも無い」
そして、そこで目を覚ます。
「……」
目を開いて最初に見えた天井は、ここ最近見続けていた物とは全く異なっていた。だからと言って知らない物であるわけでもない。これは、自室の天井だ。
ということは、本当に帰ってきたのか。
そういえば、腕が縛られていない。それに体中に包帯が巻かれているらしいのが何となく分かったし、足首は何かで固定されているようだし、頬にも何かが貼られている。あの場所では殆ど放置されていた傷たちの治療が成されているのだ。
あぁ、確かにここはあそこではないらしい。
体を起こそうという愚は犯さず、目を開いたまま、静かに思考を巡らせる。
あの後。
適当な村を発見した貂蝉は、適当に村民を選んで自分を押し付け、そのままさっさと折り返して行ってしまった。そこには別れの言葉も何も無く、こちらにも言うべき事は何も無かったから、無言のまま別れた。だからもしかすると、ちらりと走り去る赤兎馬を見た時、彼女がひらりと手を振った様に見えたのは気のせいだったのかもしれない。
自分を押し付けられた村民はと言うと、少し申し訳ないと思ってしまうほどに狼狽していた。それはそうだろう。何の前触れも無く、自国の主が傷だらけで現れては、慌てる以外に取るべき対応など見つからないに違いないのだ。
それでも自分の言う通りに許昌まで連絡を入れる事が出来た程度に冷静さを持てていたらしい点は、評価に値するだろう。そのお陰で今、自分はここにいる事が出来ているのだろうから。
らしい、だの、だろう、だのと、あの村民が起こした行動などを予測でしか語れないのは、途中で意識が切れてしまったからだ。連絡のとり方を指示し、壁にもたれて休息を取っていた所、いつの間にか意識が飛んでしまっていたのである。
不思議なことだと、今思い返してみても、そう考える。いくら己の領土に戻って来たからと言って、その程度で緊張の糸を切る事が出来る程、自分は楽観的な性質ではない。帰るまでは何があってもおかしく無いし、帰った後でも、何が起こり得るか分からない。それを理解しているというのにあの時、あっさりと自分は意識を手放した。
あの二週間があったからだ、とは思わない。二週間に一日が足されようと二日が足されようと大して変わりはない。そのくらいならば問題なく耐えきれる。
だから、やはりあれは奇妙なのだ。
一体何故、あの時の自分は……。
「……ん?」
と。
ふと、傍らに誰かがいる事に気がついた。
扉が開いた気配はなかったから、自分が起きるまでずっとこの場所にいたのだろう。しかし、それで、どうして今の今まで気付けなかったのか。寝起きであろうと疲労がたまっていようと、自分が他者の気配に気付けないなど……何だ、もしかするとそういった感覚が駄目になったのか。
自嘲気味にそう思いながら、傷に触れないように慎重に頭を動かし、その気配の持ち主の姿を見る。
瞬間、全ての疑問が氷解した。
あぁ、何だ。そういうことか。
と言う事は、迎えに来たのも、彼だったというわけか。……なら、気付けなかったのも仕方が無い。
椅子に座り、腕を組んで眠ってしまっている侠を見ながら、そう思い、息を吐いて。
向こう側に残してきた彼らの事を考える。
呂布は負けはしないだろう。たとえ相手が玉璽の力を得た相手であっても。それに、玉璽が袁紹では無く呂布を選ぶ可能性もある。
呂布が董卓を打ち滅ぼした時の事を思い出し、目を閉じる。
仮にそんな事があったら、袁紹は死ぬだろう。
それは、ある意味どうしようもない事ではある。戦慄の暴将と呼ばれるあの侠を相手にするという事は、つまり、そういうことなのだから。
ただ、出来る事ならそうならなければいい、と思う。
深い理由はない。何となく、袁紹の相手は自分がしなければならないような気がしているだけだ。死なれてはもう相手をしてやれないから、死ななければいいと考えているだけ。
彼を終わらせるのは自分であるべきだと感じただけ。
それは、それだけのこと。
所詮は高望みである。負けて命まで奪われていたら何ともしようが無いし、その時はきっと、二度目の決着はあっさりと諦めるだろう。これはその程度の強度しか無い、感傷のような感情だ。
何にせよ、まずは体の傷を治すところから始めなければならないだろう。呂布を相手取るにしても、袁紹を終わらせるにしても。今のまま、満身創痍のままでは話にもならない。
その後は体を慣らさなければならないし、実戦の様な鍛練も必要になるだろう。やるべき事は多くある。
まずは、そのやるべきことを一つ一つ片付けて行くことだ。焦らず、無理をせず。一歩一歩進んで行けばいい。急ぐ必要はあるかもしれないが、焦って無理をし過ぎては道のりはいっそう遠くなってしまう。
一週間後に攻め入ると袁紹は言っていたが、どうせああなってしまえばそれも無理だろう。呂布を相手にして無事でいられるわけが無いのだから、あの言葉を実行に移すことなど出来るわけが無い。
呂布の方は、特に気にする事も無い。この怪我が完治するまでは手を出して来ないのは明らかなのだから。
彼らに関しての猶予時間は、まだまだたっぷりとあるのだ。それ以外の物に関する猶予はこれから確認しなければならないが、そちらだって、どうにか出来るはずだ。ここには自分しかいないわけではないのだから。
だから、自分は、簡単なことから始めよう。
そして、一番簡単なやるべき事は、幸いにも今この瞬間にも出来る事柄だった。
相手は眠っているようだが……まぁ、良い。
ふ、と笑んで、曹操は言った。
「帰ったぞ、夏侯惇」
~おしまい。曹操様が帰ってきました。
惇兄が近くにいるって分かったら、緊張の糸くらい切れるんじゃないかなと思ったんだ。
ちょっと考え方が緩やかな感じになってるのは、やっぱり疲れてたから。ひたすらに疲れた状態で、安心できる場所に戻ってこれたら、色々と穏やかになるでしょうと言う感じ、なのかもしれない。
初めは「もしも袁紹閣下に曹操様が負けたら」という「曹操様の話」を書こうと思っていたんですけれども、気が付いたら「曹操様にまつわる人たちの話」になってたような。仕方がないとはいえ、曹操様、起承転結の中で何も出来てないんですよね……二週間もボコボコにされ続けてたから、動くに動けなくて。
全体的に、やっぱり曹操様に謝りたい気分です。
でも、何とか書きあげられたのは嬉しい、かも。穴だらけの話だったとは思うんですけれど、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
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