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キッチンから、残りの料理を二人で運び出す。
彼女がいてくれて、本当に助かった。一人では、さすがに全てを持って行くのは難しかっただろうから。
昨日はティエリアと歩いた廊下を彼女と歩く、その途中でソーマが口を開いた。
「アレルヤ、都からの『狩人』は普通に来れば、あと三日くらいの場所にいます」
「……あぁ、そういえばまだ、その話は終わっていないんだっけ」
すっかり忘れていた……昨日は、余りにも慌ただしい一日だったから。
そう苦笑すると、ため息を吐いてからソーマが口を開いた。
「いいですか、ボロは出さないでください。下手をしたら、貴方が危険になります」
「それは分かっているよ。僕だって、みんなに迷惑はかけたくない」
「でしょうね……貴方はそういう人です。自己より他」
また、ため息。
……恐らく、彼女は都からの『狩人』の目的を知っているのだと思う。だから、ここに来た。呼ばれたというのも理由だろうが、それだけではなくて。
まぁ、アレルヤにもある程度は推測はついているのだけど。ハレルヤだって、ティエリアだってそうだろう。
何故なら、この町最大の秘密を余すことなく知っているのは…この屋敷の住人だけだから。逆を言うと、屋敷の住人以外は何も知らない。だから、彼らに予測は不可能だ。
彼らに言えば、きっと町にたくさんいる『異端』を狩りに来たというだろうが……それだけのために都から『狩人』がくるはずがない。そんなことは旅をしている『狩人』にでも、情報を与えて向かわせればいいだけの話。
そこら辺の事情は、彼女の方がよく知っているだろう。だからこそ、ソーマには本当の目的が推測できたのだと思う。そして、本当に分かってしまった。
分かったから、目的に繋がるアレルヤ、ハレルヤ、ティエリア、そして……この、屋敷。それらを守るために、彼女はここに来たのだろう。
「ソーマちゃん、あまり無理はしないでね?」
「…分かっています。頼りたくはないですが、ハレルヤもいますから。大丈夫です」
アレルヤの考えていることを理解しているらしい。嬉しそうにソーマは微笑んだ。
…といっても、他人が見ても分かりづらいかも知れない。それほどまでにうっすらと。
「そういえば……ずっと前から気になっていたのですが、どうしてキッチンが食堂から遠い場所にあるのですか?効率が悪いと思うのですが」
「あ……それはね…その、前あったのは壊れちゃったんだよ」
「……原因は何となく分かりました」
どうしても曖昧な答えになってしまうが、それでソーマは理解したらしい。呆れとも同情ともとれない表情を浮かべた。
「苦労していますね、アレルヤ」
「それほどれもないよ……最近は昔よりは落ち着いていると…思うし」
本当だ。近頃はとても安定している……多分。
ハッキリと断言できないことをもの悲しく思いながらも、アレルヤは足を進める。
後ろからついてくる、ソーマがポツリと呟いた。
「 」
それを受けて、アレルヤは微笑んだ。
「うん。分かってる。」