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チビスターズ第二話 ③
エクシアの傍で待機していたハロたちのおかげで、刹那は無事にコクピット内に入ることができた。もしも彼らがいなかったら、入ることは酷く難しかったかもしれない。無重力状態ならまだしも、今は疑似重力が発生している。高い場所には手が届かないのだ。
いつもの体がとても懐かしく思える。こうなってしまってまだ半日もたっていないというのに。それだけ、この体は不便だった。
座席に座った刹那は、まずは操縦桿に手を伸ばすことにした。
それから軽く動かしてみる。起動しているわけではないので、操縦桿を引いても押しても問題はない。
その行動の結果、分かったことが一つ。
……無理だ。
刹那はため息を吐いて手を離した。
できないほどではないのだ。腕の長さも何とか足りているようだし、この状態の握力でも問題は無さそうだった。
ただ、前の状態に慣れすぎている。今の状態では違和感がありすぎて、キチンとした操縦ができないだろうことが、とてもよく分かった。
こんな状態でエクシアに乗ってはいけない。危険だし、なにより、そんなことをするのは自分が許せないから。
ため息を吐きながら降りると、室内に先ほどまではいなかった人影があった。
「ラッセ?」
「よう、刹那」
どうして、彼がここにいるのだろうか?
首をかしげる。ラッセはここに、用事はないはずだけども。
そんな刹那の様子にかまわず、ラッセはこちらに近づいてきた。
「エクシアに乗ったんだろう?どうだった?」
「……ダメだ。今の状態で乗ることは、俺自身が許せない」
「お前らしい物言いだな」
どかり、と腰を下ろした彼の隣に腰掛けると、ポンッと頭に手を乗せられた。
……そういえばアレルヤも、ティエリアに頭を触れられていた。もしかしたら、この身長だとこういうことがしやすいのだろうか。
不快な思いはしないけれど…何とも言えない気持ちになる。
「ラッセ…」
「お、悪いな。つい手が出ちまった」
「つい、で出る物か?」
「出ちまったもんはしょうがないさ……にしてもお前、大変だな」
「小さくなったことか」
確かに、これは大変なことだ。簡単にできていたこと何もかもが難しくなり、世界がガラリと一変してしまう。
良かったことと言えば、アレルヤと同じ目線になったことくらいか。だが、贅沢を言わせてもらえるのならば、彼より高い身長が欲しかった。あの長身を追い越すのは並大抵の努力では無理だろうから、こういうときにでもその気分を味わっておきたかった。言ったところで何の足しにもならないが。
「不便だが、慣れる努力はしてみるつもりだ」
「そうか……何か困ったことがあったら、すぐに言えよ?」
「あぁ」
言われて、気づく。
……そうか。彼は別に用事とかではなくて、ただ単に自分のことを気にしてくれたのだ。
ラッセには、そういうところがある。他人をよく見ているというか。マイスターズの中だとロックオンみたいなポジションにいる。
良いヤツだな、と改めて思った。
「ラッセ、何か欲しい物はあるか?」
「ん?」
「地上に降りるついでだ。あるなら買ってくるが」
「好意は嬉しいが、今はないな」
「そうか……」
(心配してくれたことに対して、何らかのお礼がしたいのだが……)
ラッセも、ロク兄とは方向性が違えど兄貴キャラだと思う。